大人の女性にも好きな服を着てほしい
── 子どもが生まれると、親は自分のファッションを後回しにしがちです。板橋さんの場合はいかがでしたか?
板橋さん:出産してから数年間は、今までのようなおしゃれをする機会が減って、授乳しやすい服だったり、公園遊びのときに動きやすい服だったり、抱っこしていても転ばないよう控えめな厚底靴にしたり、色も黒ばかり着るようになりました。
乳児のときは、抱っこしていたら服のあちこちによだれがついていたり、幼児のときは、いつのまにか固まった米粒がついていたり、子どもと一緒にいると、気をつけていても必ず汚れちゃうので(笑)どんなにかわいい格好をしていようとも、いつなんどき汚れても平気になりました。
年齢を重ねるにつれて、好きなものは変わらなくても、似合うものが変わってきてしまうと感じることも。でも「いつまでも自分らしく洋服を楽しみたい!」と考えたときに、世の中に自分が着たいと思えるお洋服が少ないのかも…と感じることもあり、あらためて、年齢を重ねた自分も着たいと思えるお洋服を作っていきたいと思いました。
── ブランドが成長していくとともに、ご自身が着たい服にも変化があったのですね。
板橋さん:ポップなお洋服も少しとんがったストリートなお洋服もずっと大好きで作り続けたい世界です。ただ、40代になり、ライフスタイルも変化して新しい価値観が加わって。そんな今の自分も着たいと思える、大人なガーリー服やシチュエーションで楽しめるような遊び心のある服など、新たに表現したいスタイルや世界がまだまだたくさんあります。これからもわくわくした気持ちとともに作り続けていきたいです。
── 板橋さんは、つねに挑戦し続けている印象を受けました。
板橋さん:たしかにずっと「自分ができていないことは何か」とか「それができるようになるにはどうしたらいいか」を考えているかもしれません。いつも現状に満足している感覚はなくて、そんな自分が自信を持てるように、反省を繰り返しながら挑戦し続けている感じです。
── ご両親はどのようにおっしゃっていますか?
板橋さん:応援はしつつも、忙しくしているので「体を壊さないようにね」と心配してくれています。ちなみに、実家は自営業だったので、父はずっと運動会や授業参観に来たことがありませんでした。でも、15周年を記念したファッションショーを開催したとき、初めて父が観に来てくれて。そのときはとてもうれしかったですね。
── 板橋さんのご両親の、子どものやりたいことを見守りながら応援する姿勢は素敵だと思います。
板橋さん:進路を決めるとき、学校の先生からは「辞めたほうがいい」と大反対されたんです。でも親は私に反対せず、むしろ「好きなことで失敗してもそれは自分の糧になるからやったほうがいい」と背中を押してくれました。それは、今の自分の娘への接し方にも影響しているかもしれません。やっぱり娘にもやりたいと思ったことは、とことんやらせてあげられるような自分でいたいですね。
PROFILE 板橋よしえさん
いたばし・よしえ。1975年生まれ。埼玉県出身。19歳でファッションブランド『Candy Stripper(キャンディストリッパー)』を立ち上げ、企業コラボやミュージシャンとのコラボ商品、衣装、スタイリングなども数多く手がける。
取材・文/池守りぜね 写真提供/板橋よしえ