「社会に存在を伝える」ことで変わること
── 育児ノートや車いすマークホルダーなど、障害児を育てる親にとって優しい気持ちになるものが社会に増えることで、外出へのハードルも下がるのではないでしょうか。
山崎さん:障害者やその家族といったマイノリティな人たちが、外に出ないと「関わり」が生まれません。関わりがないと、どうしても自分のモノサシでイメージをつくってしまうと思うんです。「重度障害者やその家族は不幸」と思う人もいるかもしれません。でも私は、家族や周りの人たちに愛されながら日々成長しているいっくんを見て「この子は不幸じゃない」と言いきれるんです。
「普通の成長」ができなくても不幸ではないと知ることで、それまで障害とは無縁だった私自身もすごく変われました。「完璧でない」ことに優しくなれましたし、そんなお互いを認めて、補い合いながら生きていく幸せを知ることができたと思っています。
──「普通の成長」に縛られずに生きられると、障害のあるなしに関係なく、たくさんの人が肩の力を入れずに生きられる社会になりそうですね。
山崎さん:「受け入れなくちゃ」と意識的に受け入れてもらうことや、美談にして特別扱いしてもらいたいわけでもないんです。そんなマイノリティ側が受け身でいるという雰囲気は、マイノリティ側から変えられることもあると思います。「外に出ても大丈夫だよ」「ひとりじゃないよ」というメッセージをのせた商品が、お互いが歩み寄ることのできる社会へのきっかけになれればと願っています。
PROFILE 山崎絵美さん
やまさき・えみ。地元企業のポスターやチラシの印刷やデザインを手掛ける株式会社トレンド(島根県松江市)の社員。3人きょうだいの母親で、2015年に産まれた末っ子の生翔くんには重度の知的・身体障害がある。2021年に障害児の親に寄り添うためのブランド「cocoe」を社内で立ち上げ、育児ノートやベビーカー・バギー用の車いすマークホルダーなどを開発。障害児の親に寄り添う商品開発を続けている。
取材・文/桐田さえ 画像提供/山崎絵美