子育てがサッカースクールの運営に活きて
── 息子さんは4人ともサッカーをしているそうですが、誰か「辞めたい」と言い出したことはありましたか。
大久保さん:長男が、一度だけありました。夫がプロとして全盛期のときに、長男は思春期真っただ中で。目には見えないプレッシャーを感じていたんだと思いますが、サッカーから離れていた時期がありました。
── そのとき、親としてどんな対応をしたのですか。
大久保さん:私たちは特に何も言いませんでした。別のサッカースクールの見学に一緒につき添うくらいで、何も無理強いはしなかったですね。そのあと出会ったスクールでまたサッカーが大好きになったので、楽しいと思える環境があれば、また好きになれるという経験をしました。指導も含めて、そういうチームを作りたいと夫と話しています。今19歳の長男は将来、サッカーに関する仕事に就きたいと言っています。
次男も、レギュラーになれず新品のユニフォームで試合に行って、ピカピカのままで帰ってきていた時期がありました。次男はそこでサッカーを嫌いにはならなかったのですが、「すごくつらいときがあった」という話を後から聞いて。うちの子たちはサッカーがすでに生き甲斐となっているのですが、何かをきっかけにそれがなくなってしまうのは怖いなと思ったんです。強豪であるほど難しいと思うのですが「みんなが輝ける場所を作ってあげたい」という思いはスクールに反映したいです。特に小学生ころまでは、指導者から威圧的に言われてしまったらそのまま素直に聞いてしまいますよね。
── 大久保嘉人さんがプロデュースしているとなれば技術面の上達を期待する親も多そうです。
大久保さん:子どもたちからしたらバラエティに出ているおもしろい人という印象が強いかと思いますが(笑)、夫のこれまでの功績というのは、サッカースクールにも還元できたらいいなと思っています。夫はそれこそ第一線でやってきたので、スクールの子どもたちにも同じようにと思う気持ちもあるのですが、技術を教え込むだけでは伸びないので、人生が豊かになるようなスクールにしたいと夫婦でよく話しています。時代や環境に合わせてスクールの舵取りも変えていかなくてはならないなと思います。
PROFILE 大久保莉瑛さん
おおくぼ・りえ。1983年長崎県生まれ。短大を卒業後、航空会社勤務を経て、夫で元プロサッカー選手の大久保嘉人さんのスペイン移籍を機に結婚、退職。現在19歳、14歳、12歳、7歳の4人の息子を育てながらサッカースクール「Btrece(ベトレーセ)」の運営を行う。
取材・文/内橋明日香 写真提供/大久保莉瑛