「ママ、忙しくなっちゃうけど…」
── 子育てをしながら気づいたことはありますか?
大和田さん:母と同じく私も働く女性になったわけですが、よかったなって思うのは、私が仕事に行くときに娘が「ママ行かないで!私の方が大事じゃないの?」って全部言葉にして言うんです。私が舞台で3週間家を空けてしまうときは、娘は寂しくて泣くし、私が子どものころに言えずに我慢した言葉を全部素直に言ってくれるのはすごくうれしい。私は「あなたが一番大切」と言って抱きしめます。私が子どものころは、母から「美帆、大丈夫?」って聞かれると「大丈夫」と答えていて。でもある日「私だって大丈夫じゃないよ」と言ってみたら「そんなこと言われたら仕事に行けない」って言われた気がして、その後はずっと我慢してましたね。だから娘には「ママ、忙しくなっちゃうけどどういう気持ち?」って聞くようにしているし、私も気持ちを言っていいよってオーラを出すようにしています。
ときにはわざと「最低なママだね」と言ってくることもあるんですけど、これも全部甘えなんですね。娘は私と違ってすごく甘え上手に育ってます。実際、娘は父親と一緒に住んでいないし、寂しい思いをさせているのもたしかだから、そこは存分にケアをしています。
── 子育てをして楽しいと思うのはどんな時ですか?
大和田さん:娘を見ていると、忘れていた自分の幼少期を思い出させてもらうことがあるんです。たとえば娘の運動会に行くと、昔みんなでお弁当を食べたとか。みんなで和気あいあいとしゃべって楽しかった記憶が蘇るし。私も娘もひとりっ子なので、もうひとり楽しい相棒ができたような気もするんですよね。母も同じくひとりっ子でしたが、同じようなことを言っていて。よく、子育てをしているお母さんって大変なことばかり耳にすることもありますけど、私、子育てって楽しいと思うんですよね。
── シングルマザー=大変だという人もなかにはいますが、そうではないと。
大和田さん:それ、それ!かわいそうってほんと違うと思います。お父さんがいるから幸せとは限らないし、何が幸せかは人それぞれ。シングルマザーになって世間の目を気にしてしまったこともありますが、幸せになるために離婚したので。離婚したとき、先に離婚した先輩から「おめでとう」って言われたんですよ。「おめでとう。よかったね。幸せになるんでしょ」って。たしかに人それぞれ、離婚の内容にもよるとは思いますし、子どもを振り回してしまった反省はあります。その分、後悔しないように自分たちの幸せのかたちを作ってきました。
── お父さんが子育てについて何かおっしゃることはありますか?
大和田さん:たまにフォローしてくれるくらいですね。私が娘を叱ると、父のところに泣きながら行って、ママが怒ってきたって頼って。ありがたい存在です。父だけではなく、私の友人や母の友人、みんなで子育てしています。愛情があればどんな家族の形でも大丈夫、そう信じています。
PROFILE 大和田美帆さん
おおわだ・みほ。1983年生まれ。東京都出身。2003年、舞台『PURE LOVE』でデビュー。ミュージカル『阿国』、音楽劇『ガラスの仮面』、『アマデウス』、『ハリーポッターと呪いの子』など多くの舞台で活躍。「チョイス@病気になった時」にMCとして出演中。1児の母。
取材・文/松永怜 写真提供/大和田美帆