モデルで車いすユーザーの葦原みゅうさん。パリやミラノ、ニューヨークなどのファッションショーで活躍するほか、TikTokフォロワー37万人を超えるインフルエンサーとしても人気です。海外と日本のバリアフリー環境の違いや、炎上しやすい障がい者のSNS発信についての思いとは。(全3回中の2回)
海外の大都市でも感じたバリアフリーの壁
── みゅうさんはこれまで車いすモデルとして、パリやミラノ、先日はニューヨークのショーにもご出演されています。環境や障がいのある人への目線など、日本との違いで印象的だったことはありますか?
みゅうさん:ミラノ、パリ、ニューヨーク、それぞれの街でも全然違うんですが、ヨーロッパは石畳の道が多くて、車いすで出歩くのは厳しいんじゃないかと思っていました。でも、地下鉄も車いすで乗れるようになっていたり、車いすに配慮されている部分が多かったです。
逆に今年訪れたニューヨークは、私のなかでは勝手にバリアフリーが進んでいるイメージがあったのですが、全然バリアフリーが進んでなくて。もちろん、いろんな人種の方がいるし、街なかで車いすの方も見かけました。でも、地下鉄は、私が降りたい駅ではエレベーターがないことがほとんどで。日本の都心なら少なくとも、エレベーターがない出口はあっても、駅自体にエレベーターがないことってほとんどないじゃないですか。ニューヨークは出口だけではなく、そもそも駅にエレベーターが備わっていないことが多くて。地下鉄なので、地上に車いすを上げてもらうのも大変ですし、エレベーターがある駅まで数駅移動したりもしました。とはいえ、街で車いすユーザーを見かける機会が日本より多いからこそ、差別的な目線を感じることは少なく、「心のバリアフリー」は実感しました。
今回はフロリダにも行ってきたんですが、フロリダは車社会なので、車いすの方が外を歩いている姿はなかなか見かけないけど、車いす専用の駐車場はきちんと用意されていて。フロリダ州では、車いすユーザー以外が車いす専用の駐車場を使ったら、罰金を取られる法律が設けられているほど。日本とはまた違う形で、バリアフリーが進んでいるところと進んでないところがあるんだな、と感じました。
フロリダの「ディズニーワールド」で驚いた光景
── ニューヨークのエレベーター問題は意外でした!
みゅうさん:そうですよね。帰国してから調べたら、ニューヨークの地下鉄では、エレベーターがある駅は30%をきっていると知りました。
一方で、フロリダですごく驚いたことがあったんです。「ウォルト・ディズニー・ワールド・リゾート」に行ったんですが、車いすのキャストがいたんですよ!それがすごく衝撃的で。私が日本のディズニーに行ったときは、車いすのキャストの方を見かけたことはなかったんです。「東京ディズニーリゾート」に限らず、日本のほかのテーマパークでもこれまで見たことはありませんでした。
ただ、フロリダのディズニーでは、ゲートの入り口でチケット係に、車いすのキャストがいて、ゲストをお見送りしていました。最終日に入ったお土産のショップも、レジ担当が車いすの方で。首の後ろを支えるタイプの車いすに乗っていて、手にもまひがある、私よりも重度の障がいがある方でした。その方の隣に介助犬が一緒にいて、ワンちゃんもキャストバッジをつけていたんですよ。聞いたら、その方と介助犬で「ペアキャスト」なんですって。介助犬は、その方が落としたものを拾ったり、お客さんが落としたものを拾ったりしてくれるんだそうです。
── 素敵ですね。
みゅうさん:そうですよね。人件費だけ考えたら、ある程度ひとりで動ける人を雇ったほうが効率的なのかもしれません。でも、物が拾えないんだったらワンちゃんとセットで働けばいい、という考え方が素敵だなと思いました。
── 最近はモデルだけではなく、インフルエンサーとしてもご活躍です。YouTubeチャンネルでは「トイレはどうしているの?」といった、視聴者からの率直な質問にも答えていますね。
みゅうさん:そうですね。聞かれたらなんでも答えなきゃと思っているわけではないし、聞かれて嫌なことは「答えられないです」って言えばいいだけとは思っているのですが。ただ、そもそも答えられないことはあんまりないですね。あれこれ聞かれることに対しても、別に何も思わないんです。
逆に私は視聴者の方が「車いすだと、こういうことはどうしているの?」って率直に聞いてくれたことで、「こういうことが気になるんだ」と発見することもあって。それをもとに動画を撮っているので、そんなコミュニケーションも楽しいと感じています。