毎回が真剣勝負「お客さんもプロですから」

── なるほど。「くたびれ感」がないのは、前向きなそのマインドと心の若さのせいですかね。

 

森脇さん:気持ちはつねに挑戦者ですね。ぼくにとって、一つひとつの仕事がオーディションだと思っているので、毎回チャンスを取りに行くつもりで挑んでいます。そこで手応えを得られれば、また次へとつながっていきますから。いまだにどんな仕事でもワクワクできるのは、挑む気持ちがあるからじゃないかなと思うんです。

 

12本のレギュラー番組を抱え、寝る間もなかった20代から一転、人気が低迷して30代は暗黒期。そこから、ようやくまた皆さんの前でこうしてしゃべることができている。ジェットコースターのように波乱万丈な経験をしているので、引き出しにはいろんなネタが詰まっています。「25歳で年収1億円」「バブル期で移動はヘリコプター」なんて過去の栄光も、全部ネタになりますし。これはぼくにとって大きな強みだと思っているんです。

 

とはいえ、単なる昔話や自慢で終わると意味がないので、それをいかにおもしろおかしくしゃべってみんなに笑ってもらえるか。ここが芸人としての頑張りどころです。日々、頭を働かせ、汗をかきながら努力し続けていかないといけない。やっぱり年とともに、脳も感性もどんどん錆びついていきますから。

 

── 年を重ねても、錆びない努力を続けるのは、素敵な考え方ですね。

 

森脇さん:関西で30年ほどラジオ番組をやっているのですが、それがすごく役立っていますね。いまも毎週4時間ほど番組を持っているので、つねにアンテナを張って、気になるところに足を運んだり、街の人たちとしゃべったり。いろんな刺激を得ながら、物事を深く掘り下げるようにしています。リスナーさんのなかには長年聴いてくださっている方も多いので、少しでも手を抜くと簡単に伝わってしまう。こっちがしゃべるプロだとしたら、あちらは聴くプロ。だから、毎回が真剣勝負で、絶対に手は抜けません。

50代で後輩にいじられるのはうれしいこと

── 17歳でデビューし、芸歴40年のベテラン芸人。最近では、後輩芸人からイジられることも多いですが、正直、ムカッときたりしませんか(笑)?

 

森脇さん:いやいや、むしろありがたいですよ。自分よりも若い世代の芸人たちの番組に出ることが多いんですが、みんなちゃんとツッコんでくれる。それがすごくうれしくて。しかも、言葉のチョイスもセンスよくて、ツッコみがうまい。ビックリしますよ。偉そうに聞こえるかもしれませんが、才能あふれる後輩芸人と一緒に仕事をさせてもらうのは、すごく貴重なことだと思っています。売れない時期も、芸人仲間や後輩にずいぶん助けられてきました。30代前半に仕事がなかったとき、ナインティナインが『オールナイトニッポン』で、やたらとぼくの名前を出してくれたり、番組に呼んでくれたり。オードリーなんかもそうでしたね。

 

── きっと森脇さん自身が、そうした信頼関係を築いてこられたからだと思うのですが、後輩と接するなかで、意識してきたことはありますか?

 

森脇さん:売れているときでも、後輩に偉そうに振る舞うことはしないようにしていましたね。やっぱり自分が後輩のときに、「なんやねん、この人」と感じる先輩もいるわけです。後輩のボケをつぶしにかかったり、態度が偉ぶっていたり、「だるい、疲れた」を連発したり。そういう先輩はやっぱり尊敬できないし、一緒に仕事したくないじゃないですか。笑福亭鶴瓶さんしかり、関根勤さんしかり、第一線で活躍し続けている諸先輩方を見ていると、まったく偉ぶらないし、若手にもきちんと接して、ときにはアドバイスをくださる。そういう背中を見てきたから、自分もそうなりたい気持ちで接してきたつもりです。

 

PROFILE 森脇健児さん

もりわき・けんじ。1967年、大阪府生まれ。京都・洛南高校時代には陸上でインターハイ出場。高校在学中に芸能界入り。1990年代には『笑っていいとも!』『夢がMORI MORI』などの人気番組に多数出演。TBS『オールスター感謝祭』の人気企画「赤坂5丁目ミニマラソン」には2003年から連続出場。YouTube『やる気!元気!森脇チャンネル』更新中。

 

取材・文/西尾英子 写真提供/森脇健児