55歳でNHKを退職した武田真一さん。大手事務所などには所属せず、奥さんと2人で個人事務所を立ち上げる選択をしました。背景には退職前の大阪のニュース番組で抱いたある思いがありました。(全3回中の2回)

「慣れ」はいまだにない

武田真一
ギターを弾く武田さん

── 55歳でNHKを退職してフリーアナウンサーに。振り返って今までいかがでしたか? 

 

武田さん:とにかく楽しく学びの多い1年半でしたね。NHK時代は、主に報道番組を担当してきましたが、今出演している『DayDay.』は、バラエティー要素もある情報番組なので、これまでにない経験をたくさんさせていただき、毎日刺激を受けています。この歳になって、こんなにも新しいことをいろいろ経験できるものかと、すごく幸せに感じていますね。

 

── 充実されているのですね。新しい環境にもだいぶ馴染まれたのでは?

 

武田さん:2023年4月に『DayDay.』がスタートしたのですが、始まるまでは「2時間10分の生放送というのは、きっと長いんだろうな」と思っていたんです。ところが、終わってみたらあっという間。怒涛のように過ぎていき「え、もう時間!?」という感じでした。一緒に司会を担当している山ちゃん(南海キャンディーズ・山里亮太さん)はじめ、出演者やスタッフの皆さんがとても温かいので、楽しくお仕事をさせていただいています。ただ「慣れ」というのは、いまだにないんです。テレビ番組というフォーマットは同じでも、情報番組ですから、毎日中身が変わりますし、それをどういう風に伝えるのかも、毎回違います。環境自体に慣れはしても、伝えることに「慣れ」はないですし、逆に、慣れてはいけない気がします。「今日はうまくできたけど、明日も同じようにできるかどうかわからない」ということの連続です。

 

── NHKでは『クローズアップ現代+』など、報道番組を担当されることが多かった武田さんですが、『DayDay.』は、バラエティーに富んだ情報番組で扱う内容も多岐に渡ります。やはり違いは感じますか?

 

武田さん:私自身、想像していたほど違いは感じていないんです。あえて言うなら、同じテレビ業界でも、NHKと民放では、業界用語が多少違った点くらいでしょうか。人々に新しい情報やモノの考え方などをお伝えすることで、「今日も1日、朝から頑張ろう!」と前向きな気持ちになっていただく。その精神は、どこにいてもまったく変わりはないですね。

 

── フリーになってもブレがないのはさすがですね。プレッシャーや不安を感じたりはされないのでしょうか?

 

武田さん:もちろんあります。これまでNHKという組織に雇用されていたので、たとえ番組がなくなってもクビになることもないし、黙っていても次の仕事が与えられてきました。でも、今はフリーですから、先の保障があるわけではありません。自分の言動や態度、立ち振る舞いの一つひとつが評価の対象になりますから、プレッシャーや不安がないといったら嘘になります。

 

どうすれば番組に貢献できるのか、常に考えています。会社員時代よりも、さらに責任感を持ってのぞんでいますね。