芸人として、さらには映画監督としても活躍しているお笑いコンビ・ガレッジセールのゴリさん。2人の子どもを育てる父親でもあるゴリさんは、子育てでは「体温が感じられる関係性」を大切にしてきたと話します。(全4回中の4回)

母に甘えられなかった僕「わが子には寂しい思いをさせたくない」

ガレッジセール・ゴリさん
ストライプのデニムジャケットがおしゃれなゴリさん

── 2003年にご長男が誕生されています。子育てではどんなことを大切にされてきましたか?

 

ゴリさん:僕は6歳のときに、事情があって大阪の親戚に預けられたんですが、その経験がどうしても心に残っていて。「母ちゃんに甘えたかったなあ」という思いがすごくあったんです。当時、母は2か月に1回、出張で大阪の親戚の家に来ていて。夜は隣に布団を敷いて寝てくれるんですけど、僕は夜中に必ず目が覚めて、そっと母ちゃんの布団に入るんですよ。それで母ちゃんの体を触るんです。甘えたくて。日中はそんなふうに甘えられないから、寝ているときにそっと抱きついたりするんですけど、母ちゃんは途中で寝がえりを打って背中を向けるんですね。今振り返ると、あのとき、実は母ちゃんは起きていたんだろうなぁ。僕は「ヤバい、起きるかな」ってドキドキしていたんですけどね。

ガレッジセール・ゴリさん
監督を務めた映画『洗骨』は母親への想いが込められた作品。世界的な評価も高い

そんな子ども時代の「母親に満足に甘えられなかった」というトラウマが、大人になってからも心に残っていて。「自分が親になったら、できるだけ子どものそばにいてあげたい」といつも思っていました。

 

だから、長男が生まれた日は、親が寝泊まりできる産院だったので、僕は子どもとずっと一緒にいて、腕枕で寝かせてましたからね。退院後もできる限り一緒にいたくて、仕事が終わったらすぐ家に帰って。お風呂に入れて、いっぱい抱っこして、僕の胸の上に寝かせていました(笑)。僕にとって、愛情を伝える一番の方法は、たくさんの愛の言葉より、体温を伝えることでした。特に子どもたちが小さいころは、一緒にいることを大事に、常に肌を密着させるようにしていましたね。

小学校受験当日、わが子の「行きたくない」にハッとして

── お子さんとの印象的な思い出はありますか?

 

ゴリさん:今でも長男と話すのが、小学校受験のときのことですね。子どもにはよりよい人生を送ってほしくて、いい教育を受けさせようと思ったんです。それで、長男には幼稚園から教室に行かせ、小学校受験の準備を整えていました。でも、受験当日、親がスーツを着て「いざ行くぞ」と振り返ったら、長男が体育座りをして動かないんですよ。

 

「どうした?」って聞いたら、「行きたくない」って言うんです。「なんで?」と聞くと、「幼稚園の友だちと同じ(学区内の公立)小学校に行きたい」って。それで、僕はハッとしちゃって。「ああ俺は、親の理想の人生を子どもに押しつけようとしていたんだ」と気づいたんです。それで「そうか、じゃあやめよう」と決断しました。結局、長男は近所の公立小学校に進学しました。