『ジョブチューン』出演のおかげで自分の世界も広がった
── 宣伝効果を含め、コンビニ側にとって番組出演のメリットは大きいと思います。いっぽうで、シェフにとって出演のモチベーションとなるものはなんですか?
安食さん:いちパティシエとして有名になりたい、という欲はありません。ただ、番組に出演して知名度が上がることで、新たなビジネスチャンスにつながるのは事実です。全国に2万店舗あると言われる洋菓子店のなかで、お客様にいかに選んでもらえるか。そういう意味ではコンクールで賞をとるのと同じ。「この人だったら」と思っていただいくきっかけがそこで生まれることもある。実際、ある若い農家さんから「横浜でマンゴーを作ろうと思ってる。まず安食さんに使ってもらいたい」と、いきなり飛び込みで店に来られたこともありました。
人との縁も生まれてくるし、いままで出会わなかったような人、業種の人と出会えるきっかけにもなる。世界は絶対に広がります。もちろん、求められて番組に出るからには、それ以上の存在価値を出していきたい。ひとつの仕事として、報酬以上のものを提供しよう、というプロ意識はあります。毎回、結果を残さなければ、次のオファーはないでしょう。だからといって、これからいろいろなテレビ番組に出まくるなんてことはないですよ(笑)。自分はあくまでも職人として、地に足をちゃんとつけていく。一流の町のケーキ屋さんであり続けていくつもりです。
PROFILE 安食雄二さん
あじき・ゆうじ。1967年生まれ、東京都東村山市出身。武蔵野調理師専門学校卒業後、「ら・利す帆ん洋菓子店」入店。「鴫立亭」、横浜ロイヤルパークホテル オープニング製菓主任、「モンサンクレール」オープニングスーシェフを経て、「デフェール」シェフパティシエを務める。1996年グランプリインターナショナル・マンダリンナポレオンコンクール(世界大会)日本人初優勝。2010年、北山田に「SWEETS garden YUJI AJIKI」をオープン。
取材・文/小野寺悦子 画像提供/SWEETS garden YUJI AJIKI