人気テレビ番組『ジョブチューン』のジャッジ企画で、穏やかな笑みを浮かべ優しい言葉を紡ぐ姿が印象的な安食雄二さん。出演のきっかけから番組の裏側まで聞いちゃいました!(全3回中の1回)
「忖度なし」いちパティシエとしてジャッジ
── 北山田の人気パティスリー「SWEETS garden YUJI AJIKI」の名パティシエとして知られる安食シェフ。TBSのバラエティ番組『ジョブチューン~アノ職業のヒミツぶっちゃけます!』の審査員としてもおなじみですが、出演のきっかけは何だったのでしょう。
安食さん:僕が30代のころはパティシエブームでテレビにもたびたび出ていましたが、その後しばらく出演を控えていた時期がありました。じつは『ジョブチューン』も、2回オファーを断っていたんです。正直なところ、茶番なのかなと勝手に考えていて。でも、実際に番組を見てみると、辻口博啓さんや鎧塚俊彦さん、柴田武さんが出ている。みんな仲良しなので、なんか楽しそうじゃん!と思って。それに、職人としてしっかり向き合える番組なのかな、という印象を持ちました。
── 番組ではコンビニなどメーカーの開発者が自社製品を持ち込み、名シェフたちがそれをジャッジしていきます。実際に出演して、現場の様子はいかがですか?
安食さん:収録は朝9時からはじまって、休憩をはさんで、17〜18時ごろまで続きます。放映ではカットされているけれど、10品試食して、1品ごとに審査員7人全員のコメントを録っていくので、そのくらい時間がかかっちゃうんですよね。やはり緊張感がありますよ。たくさんの視聴者の目があって、同業者もきっと見ているでしょう。そこでプロとして的確な意見を言わなければいけない。自分の職人としての経験値や知識があの瞬間に、パッと出てしまうから。
「この人はうわべだけだな」、「好感度を上げるために言ってるんだな」とか、やっぱり見透かされるじゃないですか。僕はもう10回くらい出ているけれど、毎回、自分で見て「もっと簡潔に言わなきゃ」「怖い顔しすぎ!」と反省しています(笑)。
──「ロングセラー商品や定番商品って、手を加え続けることで愛され続けるってずっと今も思ってきた」など、コンビニの開発者たちに対する、安食シェフの思いやりある言葉が印象的です。
安食さん:彼らは自分の弟子ではありませんから。コンビニの開発者というプロであり、お互いプロという意味では同等だと思っているので、上から偉そうなことを言う気にはまったくなれないですよね。だからテレビを見た人には「安食シェフは優しい」なんて言われますけど、自分の店の厨房では相当キツイですよ(笑)。そもそも、ぼくらと彼らの仕事はまったく違います。ぼくらは毎朝5時半に厨房に立って、焼き始めて、冷まして、組み立てて、カットして、お店に並べる。買っていただいて、その日のうちに召し上がっていただく。いっぽう、彼らは低コストで商品を作り、物流にかけ、店頭で数日もたせなければいけない。お互い制約があるなかで、おいしいものをいかに作るか奮闘している。
審査の基準は、コンビニスイーツとして「おいしいか、おいしくないか」「商品価値があるか、ないか」。コンビニスイーツの使命を踏まえたうえで、ジャッジしています。忖度はいっさいなく、おいしくないなと思ったら、遠慮なく不合格にもします。コンビニ側は番組でいろいろなアドバイスを受け、それを即商品に反映させられる。商品開発という意味ではこれ以上ない環境でしょうし、実際に番組を通して作り手が成長してきていると思います。何よりテレビの反響は大きいですよね。ミニストップが全品合格を達成した後なんて、ぼくも店に行ってみたけれど、すごい人で全然買えませんでしたから。