2023年に乳がんが発覚し、右胸の全摘出。今年5月には再建手術を経験したタレントの小川恵理子(55)さん。SNSでの発信、家族の支え、自分との向き合い方など小川さんの率直な言葉から心境の変化が見えてきました。(全2回中の2回)
「note」を書くときだけ現実から離れられた
── 小川さんは乳がんと診断される前から「note」で思いを綴られています。闘病中、つらい経験をしても、ユーモアを交えて語られる姿に励まされる方が多くいらっしゃったと思います。
小川さん:ありがとうございます。「note」ではこれまでもさまざまな内容を書いてきましたが、乳がんと診断されてからは、病気に関する投稿を「乳がんゆるゆる日記」 というタイトルで綴っているんです。「note」にありのままの気持ちを書くことで、私自身が本当に救われていました。
人それぞれ病気との向き合い方は違いますよね。周りに心配かけまいと、ひとりで頑張る方もいらっしゃるでしょう。けれど、私の場合は全部さらけ出して、何もかも吐き出さないと乗り越えられないなと感じていて。「note」に書くことで自分の気持ちがラクになり、肩の荷がおりるような感覚がありました。
それに書いているときって「こういう自分になりたい」という明るい自分がそこにいるような気がするんです。実際はむちゃくちゃ泣いたり、落ち込んだりしているんですけどね。「痛い、しんどい」って家族の前では散々泣き言を言ってましたから。けれど、「note」を書いているときだけはつらい現実から離れられる。そんな気持ちでした。
── 周りの反響はいかがでしたか。
小川さん:たくさんの方がコメントをくださいました。「私も乳がんでこういう治療をしました」とか「いま、こういう治療をしています」など。同じ経験をした方たちからのメッセージは大きな励みになりました。
最初は自分のためだけに「note」を書いていたんですけど、だんだん読者の方とのやりとりが生まれてきて。「これから手術です」というコメントをいただくと「頑張って」と心の底から思うんですね。そしていつも思うのは、私は経験してきた人たちの言葉にすごく助けられてきたということ。
元気に回復したからこそ言えることですが、今回の闘病を通して自分の中で成長できた部分があると感じていて、この経験自体、私にとって大きな財産だと思っています。
だから、今度は私が困っている方たちの力になりたいと。私の言葉で少しでも力をもらえると感じる方がいるなら、その方がまた次の人の力になるときが来ると思うんです。励ましのバトンのように、次の人に「光のバトン」を渡していくのも、もしかしたら私のひとつの使命なのかもしれないなと、最近よく考えるんです。
── なぜそこまで思えるのでしょう。
小川さん:もともとタレントの仕事は、明るさや元気、笑いを前面に出すものなので、「かわいそう」とか「気の毒だな」と思われるのは、正直なところ少し抵抗がありました。でも、「note」を書いているうちに、このつらい経験も笑いに変えられたら、自分は前を向けるし、見てくださる方にも希望を感じてもらえるんじゃないかなって。
やっぱり皆さんが笑ってくれることが何より嬉しいんです。つらい経験も、笑いに変えられたら「こっちのもんだ」って。そういう姿を見せることで、同じ経験をしている人の力になれたら、それが私にとっての光のバトンになるんじゃないかって思うんです。