「こんなできるようになったの!?」成長に驚くことも

── 通ってらっしゃるお子さん方を見ていて、大和さんの育児経験があったからこそ共感するところや、同じ診断でもこんなに違うんだなと感じたところはありますか?

 

永里さん:こんなに違うんだなと感じることのほうが多かったですね。大和は知的障がいの特性のほうが強く出ていたので、ASD(自閉スペクトラム症)も診断に入ってはいるものの、そこまで特性が出ていなかったんです。もちろん、こだわりが強いところが共通していたり、「そういうところあるよね」と共感したりすることもあるんですけど、やっぱりお子さん一人ひとりによってタイプが違っていて。本や教科書に載っているだけじゃない部分がたくさんあるので、日々勉強中です。

 

いっぽうで、大和が毎日同じルーティンで生活していたことで今は見通しをもって過ごせるようになってきたように、同じ曜日や決められた時間にしっかりと通い続けてくれているお子さんが伸びているなということは、すごく実感しています。安心できるルーティンを組んであげることで、「こんなことできるようになったの!?」と成長を感じられるシーンがあって、ぼく自身も嬉しいですし、やりがいにつながっています。

 

── どのようなシーンで成長を感じましたか?

 

永里さん:支援学校に通うお子さんで、初めはセッション通りできなくて、自分がやりたいことをバーッとやってしまうタイプのお子さんがいたんです。まずは自由遊びをして、この場所が楽しいと思ってもらうところから始めて、ずっと通い続けてくれていて。自分で言葉を伝えることはできないんですけど、文字が読めるお子さんなので、ふとしたタイミングで「じゃあ日付を読んでみようか」とか「名前を読んでみようか」と言ってみたところ、文字に興味があるみたいだということがわかったんです。

 

トランポリンも好きだったので、ホワイトボードに「トランポリン」と書いて5分間一緒に飛んで、「じゃあ、『トランポリン』という文字を消してください」と言うと消してくれて。お姉ちゃんがバスケをやっていてボールを突くことも本人のブームだったので、ボールを投げて取ることもセッションに取り入れたり、好きな活動をたくさんしたあとに必ず“消す”という作業を入れてみたり。そんなふうに組み合わせながら進めた結果、座っていられる時間がすごく伸びて、少しコンパクトにはなるものの、通常セッションを受けられるようになりました。

 

このお子さんの場合は好きな活動を一番最後に置いておくのがいいかなと思ったので、保護者の方から情報を聞いて、学校でやっていることとデイサービスでやることをリンクさせたり、お子さんの様子を見て活動を組み込んだりする中で「あ、これだったらいけるんじゃない?」というセッションが完成しました。この2年間ですごく成長してくれたと思います。

 

── 永里さんはデイサービスのほかに、サッカースクールや運動教室も運営されています。指導者として心がけていることはありますか?

 

永里さん:発達障がいがあるお子さんのなかには、できないことに対して劣等感を持ってしまったり、周りの人からネガティブな発言をされたりすることもあるんです。たくさんの成功体験を積んで自信を持って日常生活につなげることが大事だと考えているので、結果だけではなく、そこまでのプロセスに対して「この部分ができたよね!すごいじゃん!」と言うことを心がけています。サッカーの指導をするときも、「こういうところができていないから、こういうプレーをしたほうがいいよ」ではなくて、どういうところがよかったかを具体的に伝えるようにしていて。ほめてばかりいるので、テンションの高いコーチだと思われているかもしれません(笑)。デイサービスでの子どもたちとの関わりが、サッカースクールや運動教室で指導者として関わるときにも生きています。

 

自分の子どもにも、基本的にはほめまくります。いけないことをしたときも、怒鳴ったり叱ったりではなく、今やったことを冷静に説明して「これはいいこと?悪いこと?」「じゃあどうしたらいい?」と聞くようにしています。