客員教授として今、伝えたい介護の経験

新田恵利
2019年に熱海の家を作っている新田恵利さん

── 自身の介護の経験を活かし、2023年からは淑徳大学で客員教授をされていらっしゃいます。講義では、どんなことを伝えているのですか?

 

新田さん:私の実体験を通じて、介護する家族がどんなことを考え、なにを感じて介護と向き合っているのかを伝えています。生徒さんたちは、授業の一環として介護の現場を見学することはありますが、核家族化が進んでいるいま、実際に自分が介護をする側になったり、家族のリアルな話を聞く機会はあまりないと思うんです。

 

若い子たちは頭が柔らかいから、本当に素直ですね。「介護は親子のコミュニケーションが大事だから、普段からたくさん話をして、親のことをよく知っておくといいですよ」と伝えると、「今日、お家に帰ったら、すぐ親に電話してみます」「もっと会話を増やします」と、素直な反応がかえってくるのが嬉しいですね。

 

── 「親のことをよく知っておくことが大事」というのは、私も介護経験者としてすごく共感します。親の好きな食べ物、趣味や好きな歌など、意外と知らないものですよね。「親が何をすれば喜ぶのか、よくわからない」という声を聞くことも多いです。

 

新田さん:そうなんです。そんな人たちに私がおすすめしたいのは、「KAKO KAKOノートノート」です。

 

── 「KAKO KAKOノート」? かわいらしいネーミングですが、何を記すのですか?

 

新田さん:エンディングノートと少し似ているのですが、中身が違います。エンディングノートは、自分が亡くなった後、残された人のために、大切な情報を主に書き記すものですよね。それに対し「かこかこノート」は、過去、つまり、親のこれまでの人生を知るためのものです。親がどんな人生をたどってきたかを、質問しながら親子で一緒に埋めていくんです。それ自体がコミュニケーションの時間にもなりますし、そこに記した情報が、普段の親子関係をよくするためのツールにもなったり、のちの介護にも役に立ったりします。

 

たとえば、お父さんお母さんが好きな映画などを、誕生日や記念日に一緒に観て過ごすのもいいですよね。親の人生をたどることで、あらためて親子関係を深めるきっかけにもなると思いますよ。

 

PROFILE 新田恵利さん

にった・えり。1968年生まれ。埼玉県出身。1985年、「おニャン子クラブ」の会員番号4番としてデビューし、人気者に。1986年、「冬のオペラグラス」でソロデビュー。著書に、『悔いなし介護』(主婦の友社)など。2023年、淑徳大学総合福祉学部の客員教授に就任。介護についての講演活動も精力的に行っている。

 

取材・文/西尾英子 画像提供/新田恵利