障害者が子どもを産むとなぜか「親のエゴ」だと言われてしまう

新米ママとして育児をする千葉絵里菜さん
新米ママとして育児奮闘中

── SNSやブログで車椅子ママの子育てについて発信し、このような取材を受けていらっしゃる原動力は何ですか?

 

千葉さん:取材記事が出ると、いろんな意味で反響はすごく大きいです。6月にも妊娠・出産について語った記事が出て、それについては1000件くらいコメントをいただきました。なかにはやはり「親のエゴで子どもを産むなんて」といったご意見もありましたが、全部目を通しました。記事に反響があるのはすごく嬉しいのですが、誰もがたまたま今の両親のもとに生まれてきたはずなのに、障害者が子どもを産むとなぜ「親のエゴだ」と言われなくてはいけないんだろう、という気持ちはあります。

 

SNSなどで発信を続けているのは、子どものためです。今はまだ生後5か月ですが、今後外でほかの親子とふれ合うようになったときに、車椅子のママがどういう目で見られるんだろうというのは、やっぱり考えるんですね。だから私のことで娘が嫌な思いをしないように必死に動いてるんです。Instagramでリール投稿を続けているとフォロワーさんが1000人単位で一気に増えましたが「車椅子のママはこんなふうに子育てしているよ」というのをもっと知ってもらいたいんです。

 

車椅子ママの子育ての正解が何かはわからないけど、今のうちから社会に発信していくことで、車椅子のママが社会の中で生活しているのは当たり前なんだよ、と思ってもらいたいんです。SNSでは、特にTikTok投稿のコメントに傷つく内容のものがあるのですが、書き込んでいる方のプロフィールを見ると子育て中のママさんもいらっしゃって、同じ母親なのに…と思うとショックを受けます。

いろんな存在や個性を認められる社会になってほしい

お子さんを抱く千葉絵里菜さん
ママに抱かれて、すやすや気持ちよさそう!

── そういった発信活動を含め、今後の目標を教えてください。

 

千葉さん:東京パラリンピックのときに出会った、ボッチャというスポーツの存在が自分のなかでけっこう大きくて。ボッチャは、ボールひとつあれば障害者も健常者も関係なくできる包容力のあるスポーツなんです。だからボッチャのように、いろんな人がいてもいい社会にしたいですね。もちろん反対意見があったっていいし、いろんな色があっていい。“まぜこぜ社会”になってほしいです。

 

── 記事を読む方に「これだけは伝えたい」ことはありますか?

 

千葉さん:「障害者」ってひとくくりにされがちなんですけど、それがすごく嫌で。「千葉絵里菜としてはこう思っているよ」という個人の気持ちを発信していると思ってほしいです。私は障害者の代表でも車いすママの代表でもないので、千葉絵里菜の意見として、読んでもらえたら嬉しいです。たとえ同じ脳性まひだとしても、できることとできないことは人によって違いますし。反対意見があってもいいけど、攻撃的じゃなくて常識の範囲内でみんな楽しく議論できたらと思います。こういう人もいるんだ、ああいう人もいるんだ、とそれぞれの存在を認められる社会になったらいいですよね。

 

PROFILE 千葉絵里菜さん

ちば・えりな。1994年、北海道帯広市生まれ。1歳で難病指定の胆道閉鎖症の手術をし、2歳で脳性まひが発覚。以降、重度身体障害者として車椅子生活を送っている。2017年~2021年、東京パラリンピックのNHK障害者キャスター・リポーターとして活躍。2022年に結婚し、2023年には長女を出産。家族や重度訪問介護ヘルパーに支えられながら育児をしている様子をSNSで発信し続けている。

取材・文/富田夏子 画像提供/千葉絵里菜