健康診断のとき、女性にとっては、乳がんや子宮頸がん検診の案内が送られてくると、見て見ぬふりをしたくなる人もいるでしょう。現在、お笑い芸人として活動する小林アナさん(42)は、31歳のときの検診で乳がんと宣告され、医師から驚くべき提案もされたと言います。(全3回中の1回)
31歳で区役所のがん検診で見つかった乳がん
── 小林アナさんは2013年、31歳で乳がんと告知されたと伺いました。告知されるまでの経緯を教えてください。
小林アナさん:母が40歳のときに乳がんにかかっているんです。だから私も以前から気をつけていて、25歳のときにも乳がん検診を受けていました。30歳で自治体から子宮頸がん検診の無料クーポンが送られてきました。そのとき、自己負担にはなるけれど、念のため乳がん検診も追加して受けました。すると乳がん検診だけ「要再検査」となったんです。
再検査の結果、「石灰化」が見つかりました。石灰化とは乳腺のなかにカルシウムが沈着した状態を指し、良性の場合がほとんどで、限りなくがんの可能性は低いと医師から言われました。ただ、私の場合は母が乳がん経験者です。しかも25歳の検診時に比べ、石灰化が急増しているのが気になると医師に言われました。細胞検査を行ったところ、右胸が初期の乳がんだとわかりました。
── 自覚症状などはなかったのでしょうか?
小林アナさん:まったくありませんでした。母の乳がんが発覚したときは、しこりがありました。私もそのときの記憶が鮮明に残っていたから、乳がんイコールしこりがあるものだと思っていて…。でも、私の場合はしこりもないし、触診でもエコーでも異常は見つからない。唯一、マンモグラフィーだけで石灰化したものがあるとわかった状態でした。医師によれば「あなたのがんは5段階ある進行度でいえば、初期のステージゼロです。でも、お母さんも乳がんを経験しているし、再発などのリスクを考えると、胸を全摘出したほうがいい」と言われました。
「仕事に行きなさい」母の言葉に救われた
── 自覚症状もない初期段階にもかかわらず、全摘出を勧められたのはショックだったと思います。
小林アナさん:本当にどうしたらいいかわかりませんでした。ひとりで検査結果を聞きに行ったのですが、頭が真っ白になりましたね。「私が乳がん?自覚症状もない初期段階なのに全摘出ってどういうこと?」と混乱したものの、自分のこととは思えずにドラマみたいだなと感じたくらいです。その後、じわじわとショックが襲ってきて…。告知後すぐに母に電話して「乳がんって告知されて、胸の全摘出を勧められた。どうしよう」と伝えたんです。すると母からは「今日はラジオの仕事があるでしょう?とりあえず仕事にはちゃんと行きなさい」と言われました。その言葉に「あれっ?」と拍子抜けしたというか、現実に戻った気がしました。
── お母さまは冷静ですね。
小林アナさん:もちろん母もショックだったと思います。でも、昔から学校のズル休みすら許さない人でした。「仕事に行くように」という言葉も母らしくて「浮足立たず、地に足をつけてしっかりしなさい」と支えてくれた感じがしました。おかげで「クヨクヨしてもどうしようもない。いまの私にできることは、目の前のことにきちんと取り組むことだ」と思えたんです。母が私と一緒に取り乱すのではなく、冷静でいてくれたのが心強かったです。
母は闘病中、抗がん剤治療やホルモン治療を行っていました。あるとき入浴後、母の髪の毛がバサッと抜けたんです。当時の私はそれがすごくショックでした。母も悲しんで涙を見せていました。でも、すぐに気持ちを切り替え、おしゃれなウィッグを見つけてファッションを楽しんでいたんです。そういう前向きな姿を見ていたから「きっと私も大丈夫だろう」と思えました。