ステージゼロなのに胸の全摘を勧められ「悩んだ末に…」

── 治療はどのように進めたのでしょうか?

 

小林アナさん:治療方法は病気の進行具合によっても変わります。何を優先するかは病気の進行状況や、人それぞれの考えがあると思いますが、当時の私は胸を失うのがすごく怖かったです。なんとか胸を残せないかと、セカンドオピニオンを求めて4か所くらい、他の病院に行きました。でも、どこに行っても全摘出を勧められました。そのなかで、全摘出と同時に乳房の再建手術が可能という病院を唯一見つけました。

 

── それで全摘出と再建手術をすることにしたのでしょうか?

 

小林アナさん:すぐには決断はできませんでしたが、その病院には乳がんの患者会がありました。私みたいに治療法を悩んでいる人、これから手術する人、治療中の人や何年も前に治療した人など、いろんな人が集まっていたんです。手術方法を迷っている段階で、そのクリニックで手術した方に再建した胸を見せてもらえました。すごくきれいな胸で「これだったら怖くない」と、手術を決断できました。当事者の人たちの話を聞けたのは大きかったです。もちろん医師からの説明もとても参考になったのですが、自分と同じ立場の人たちだからこそ分かり合えることがたくさんありました。

 

手術を終え、復帰祝いを開いてもらったときの1枚

── 実際に手術を受けていかがでしたか?

 

小林アナさん:手術した翌日に帰宅できるほどでした。ただ、手術後はものすごく痛くて、腕が上がらない状態。肋骨も痛く、寝起きするのも大変なほどで…。病院では「日常生活を送ることがリハビリになります。ふつうに過ごしてください」と言われました。痛みに耐えながら日常生活を送るのは大変でしたが、回復もとても早く、手術の1か月後には仕事を再開していました。

 

── 31歳で乳がんにかかるのはとてもつらい経験だったと思います。

 

小林アナさん:早期に発見できたのは本当によかったです。検診を受けることの大切さを痛感しました。区役所からの子宮頸がんのクーポンが送られてきたときに、乳がん検診も一緒に受けなかったら、がんになったことにも気づかなかったし、もっと進行していたと思います。あとは、セカンドオピニオンを受けるのも重要だと思いました。もし、思考停止になって最初の病院で言われるがまま手術を受けていたら、私は胸を失っていました。

 

乳房摘出と再建は時間をかけて行う方法が一般的で、摘出と同時に再建手術を行うのは賛否両論があるみたいです。私はメリット・デメリットの両方を理解したうえで、自分の希望する治療を選択しました。手術から約10年経ちます。胸のメンテナンスは10年に1回は必要と言われていますが、いまのところ気になることはありません。病気を治すのは医師です。病気の状況によっては治療方法が選べない場合もあるかもしれません。でも、病気も治療も自分の体のこと。すべてを医師にゆだねるのではなく、自分で調べられることは調べ、納得したうえで治療を受けることも大切だと思いました。

 

PROFILE 小林アナさん

こばやし・あな。お笑い芸人。元新潟テレビ21アナウンサー。2011年「R-1ぐらんぷり」で準決勝進出を果たし、D1グランプリイメージガール「D-Sign」も務める。2013年7月4日、乳がんに罹患していたこと、及びがん切除と乳房再建の手術をしたことを、自らのブログで公表した。ベストボディ・ジャパン大会では、那覇大会(2021年9月12日開催)のウーマンズクラス(40歳~49歳)で準グランプリを受賞。さいたま大会(2021年10月2日開催)で第3位に入賞。ラジオパーソナリティとしても活躍。

 

取材・文/齋田多恵 写真提供/小林アナ