連日の猛暑が続くなか、帰宅したら冷たい炭酸水でリフレッシュする方も。最近すっかり身近になった炭酸水ですが、実は日本では唯一、福島県金山町に軟水の天然炭酸水が採水できる場所があります。なぜ自然に炭酸が湧き続けているのか──。

 

地元の方が「町の宝」と呼ぶこの炭酸水の採掘と販売を手がける会社・ハーベスに取材すると、意外な事実がわかりました。

江戸時代に発見 旧会津藩も「太陽の水」と命名

── 福島県金山町には炭酸水が自然と湧き出る井戸があるそうですね。どういう仕組みで炭酸が入るのでしょうか。

 

ハーベス大塩工場 宮坂工場長:詳しい調査が行われていないので厳密にはわからないのですが、金山町のこの地域だけ、炭酸ガスが噴出するほかと違った性質を持つ地層があるらしく、一帯で井戸を掘ると、炭酸水が湧き出ます。地元の保存会の方に話を伺うと、この近くの沼沢火山の噴火で沼沢湖ができた際に、その地層が生まれたと言い伝えられているそうです。

 

福島県金山町にある炭酸場
炭酸水が採水できる炭酸場は自然豊かな場所にある

あとはこの地域が豪雪地帯で、地下水が豊富であることも影響しています。炭酸ガスが噴出する地層を豊富な地下水が通って、炭酸水として井戸から湧き出るそうです。

 

── お湯に入るとシュワシュワとした気泡が体につく温泉もありますね。そのイメージでしょうか。

 

宮坂工場長:まさにそれと同じで、この地域では天然炭酸湯の温泉もあります。全国にも炭酸温泉はいくつかあるのですが、飲用もできて販売されているものは当社ともう一社のみです。特に軟水の天然炭酸水ではここ金山町で採水できるものが日本で唯一のものとなっています。

 

── どのように炭酸水が発見されたのでしょうか。

 

宮坂工場長:地元の保存会の方から伺ったのは、江戸時代に、ご自身の敷地に井戸を掘った方がいらして、そこから炭酸水が湧き出たのが始まりと聞いています。その後、明治初期頃からは万能薬のような感じで、健康にいいと言うことで近隣に広まって飲まれるようになったそうです。

 

ハーベス広報 山﨑さん:金山町の歴史が書かれた『金山町史 下巻』によりますと、1877年にこの評判に着目した旧会津藩が、「太陽の水」と命名して、慢性胃腸病や糖尿病、便秘などに効果があるとして薬店に卸し売り広めたとあります。1903年に岩代天然炭酸鉱泉株式会社が創立され、ドイツの企業と提携してヨーロッパへの輸出を始めたそうです。日本でも銀座に直営店を設けて評判を高めるも、輸送の課題が壁となり止む無く休業。およそ1世紀を経て当社が2004年から製造・販売を始めることになりました。

 

太陽水
海外にも「太陽水」として輸出されていた

── その間、炭酸水は飲まれていなかったんですか。

 

宮坂工場長:炭酸水が湧き出る井戸がある炭酸場は一般に解放されているので、地元の方や評判を聞いた方がいらして炭酸水の採水に来ていましたが、輸出や販売用ではなかったそうです。

 

弊社社長の前田が、知人を通して炭酸水の存在を知り、実際にこの場所を訪れて飲んだところ、炭酸水と金山町を大変気に入ってこれを世に広めたいと事業を始めました。

 

── 事業を始めるときに住民の方の反応はどうだったのでしょうか。

 

宮坂工場長:当初は、好意的な方と、否定的な方とで意見が真っ二つにわかれたと伺っています。昔からの炭酸場のすぐ隣に当社の工場があるのですが、そこに掘削用の井戸を自社用に掘削しています。そのため、地域の方からは昔からある井戸が枯れるのではないかなどの心配の声が上がりました。しかし町役場の方からの協力もあり、工場を設立した経緯があります。