伊勢志摩サミットなどでも採用される「町の宝」

── 採水と販売をされているそうですが、天然のものに手を加えていないそうですね。

 

宮坂工場長:井戸から汲み上げる時点で少しずつ炭酸は抜けていくので、それをできるだけ抑えて炭酸を安定的に保持したままボトリングしています。天然の炭酸ガスなので、飲まれた方は炭酸が弱いとおっしゃる方もいます。でも、これが天然のよさであって、きめ細やかな滑らかさがあります。

 

── 金山町は、人口に占める65歳以上の高齢者の割合が6割以上だと町の方から伺っています。工場ができたことの影響はありますか。

 

宮坂工場長:工場ができたことで、金山町の魅力を広く発信することに貢献できていればと願っています。そもそも金山町の大自然が育んだ自然の宝を商品として製造・販売させていただいていますので、その恩返しができればという気持ちを一同、強く持っています。品名も「奥会津金山 天然炭酸の水」と地名を入れることにこだわっていますので、商品を見たお客さまが少しでも金山町に興味を持っていただければと思います。

 

── 知名度が徐々に上がっていき、サミットでも利用されているそうですね。

 

山﨑さん:国内唯一、軟水の天然炭酸水として2016年のG7伊勢志摩サミットから採用され、2019年のG20大阪サミット、去年のG7広島サミットでも採用していただいています。日本全国のミシュラン店や高級ホテルでも次々に採用いただいております。主にソムリエの方などを通じて、知っていただくことが多いです。

 

奥会津金山 天然炭酸の水
サミットなどで使われる「奥会津金山 天然炭酸の水」

お寿司を提供する店では、微炭酸がネタの味を損ねずに口の中をさっぱりさせてくれると伺っていますし、幅広いジャンルの食事と相性がいいとの声をいただいております。

 

あとは、水そのもののおいしさもあります。炭酸が抜けていって、天然水に戻っていくおいしさもあるとお店の方からいっていただけています。人工の炭酸水は、炭酸が抜けたときに感じる苦味があるのですが、炭酸が抜けてもおいしいお水を飲んでいるという感覚で飲んでいただけると思います。

 

── この季節は炭酸を飲む機会も増えます。最後まで美味しく炭酸をキープしながら飲む方法はあるのでしょうか。

 

宮坂工場長:冷やしておくのがおすすめです。一度開栓したボトルは、どうしても空間ができてしまうので、温度が暖かいと空気中に炭酸が抜けやすくなってしまいます。再び栓を開けたときに「プシュ」っという音と共に炭酸が抜けていき、水に溶け込んでいる炭酸が少なくなってしまうのです。炭酸は温度が低いと水に溶け込む性質があるので、一度開けたものは冷蔵庫で保管していただけたらと思います。

 

── 日本で唯一の天然の炭酸水をどのように知ってもらえたらと思っていますか。

 

宮坂工場長:町の宝だと地元の方がおっしゃってくれている炭酸水を通して、昨今の環境問題もそうですが、改めて自然の大切さを知って守っていこうという考えを持っていただけたらいいですね。これは完全に自然のものなので、同じものを人の手で作ろうと思ってもできません。雪と山、自然が育み、町の方が大切にしてきた宝をなくさずに、そのよさを知ってもらえたらと思います。

 

あとは残念ながらいまだに、東日本大震災とその後の原発事故の影響を懸念される方も国内外にいらっしゃいます。こちらとしては国の基準の10倍に相当する厳しい検査をしていますので、安全性についてもアピールして、復興と福島のいいものについても知っていただけたらありがたいです。限られた採取量ではありますが、大事な日本の資源をグローバルに広めていけたらと思っています。

 

取材・文/内橋明日香 写真提供/株式会社ハーベス