80年代後半に人気を博したアイドルグループ・CoCoのメンバーとして活躍した宮前真樹さん。アイドル卒業後、タレント活動を早々にリタイアし、進んだのはスイーツの道でした。その後「食」を起点にさまざまな仕事に携わるようになったそう。仕事を通じて知り合った夫とは、顔を合わせて2回目で「結婚する」と運命を感じたといいます。(全3回中の3回)

スイーツ商品化を相談した相手に「逆に図々しい」と言われ

現在の宮前真樹さん
自身がかかわった商品を販売する店頭に立つことも

── 2004年に芸能界から引退したのち、ル・コルドン・ブルー東京校で本格的に食を学びはじめたそうですね。

 

宮前さん:入学したときは、いろんな人たちと一緒に学ぶので、自分がアイドルだったことをなるべく知られたくないし、そのことに触れてほしくなかったんです。だから、誰とも仲良くならないつもりでいました。でも、結果的にはいい友達と出会えて。卒業してからは一緒にワークショップをしたり、ブランドを立ち上げて商品化することも考えました。目標を持って、楽しくやっていましたね。

 

でも、食品業界に誰もツテがいない状態で、商品を世の中に送り出すためにはどういうステップを踏んだらいいのかわからなかった。それに、元芸能人がスイーツブランドを立ち上げてそれを売り込むときに、過去の肩書を利用するなんて、自分のなかではズルいことのような気がしていました。「名前が出る仕事はできない」と勝手に自分で制限を設けていたんですよね。そのいっぽうで「どうやって進めていったらいいんだろう」と悩んでいるという。

 

── 何が突破口になったのですか?

 

宮前さん:ある通販サイトを運営している会社の社長にお会いしたときに、その話をして「正規のやり方で段階を踏みながらやりたいんです」と言ったら「逆に図々しい。あなたの今のいちばんの武器は元芸能人ということなのに。今その武器を使わなかったら、あなたと仕事をする意味がない。いずれそれを使わなくても仕事ができるようになるためにも使うべきだ」と言われて。すごくショックだったけど、腑に落ちました。私は自意識過剰になっていたんだって。その方にガツンと指摘してもらったことで、アイドルだった私と仕事をしたいと思ってくれる人と全力でご一緒させていただくのが、今の自分にできる最善策なんだと気づきました。そこから少しずついい方向に向かっていきましたね。

 

── 昨年立ち上げたグルテンフリーのロールケーキブランド「m aq bon」も好評です。

 

宮前さん:おかげさまでたくさんの方にお買い上げいただき、お問い合わせもいただいています。このロールケーキはグルテンフリーやギルトフリーを大切にしていますが、私の理想は、健康にすごくこだわってる人もそれほど気にしていない人も、みんな同じ場所で食事できるような環境をつくること。健康志向に寄りすぎず、ヘルシーなものを提供していきたいです。