酸素ボンベをつけて登校する娘のたくましいひと言

── 娘さんはすくすく成長していったとのことでしたが、幼稚園はすぐに見つかりましたか?

 

森さん:病気を抱えているので、私立の幼稚園じゃないと対応してもらえないだろうと思い一生懸命探したのですが、全敗でした。理由は、肺高血圧症という病気に対する知識や対応方法がわからないし、つねに酸素ボンベをつけているので、もし何かあっても責任が取れないので、と…。

 

公立の幼稚園は抽選ということもあり、こちらもダメだろうと思いながら区に相談しに行きました。そうしたら、担当の方から「みるちゃんなら大丈夫だと思うよ」と。私たちの住んでいる区では、子どものケアを丁寧にしてくれています。とくに、娘が生まれてからの健康診断などのデータや病状等の引き継ぎがとてもスムーズに行われており、そのおかげで無事に公立の幼稚園に入れました。入園当初は、酸素の扱いや娘との関わり方についての不安があるとのことで園長先生と相談し、しばらくは私も園内に待機していました。少し経って、先生方も慣れてこられ、何事も起こらない日が続いたので少しずつ距離をとるようになりました。

 

── その後の小学校・中学校はいかがでしたか?

 

森さん:入学当初は心配でした。でも、まわりの子たちともうまくやっているようでしたし、酸素ボンベについて聞かれても「これは酸素だよ。これがないと苦しくなるの」と堂々としていました。

 

学年が上がるとつらいこともあったようですが、「ま、いっか」精神で本当に「わが子ながらたくましいな」と何度も思いました。それに、毎日楽しく過ごしているようです。娘は、この春に高校生になりました。新しい学校生活にも少しずつ慣れていっているようで、先日は2泊3日の学校行事にも参加しました。娘だけがいない夜を過ごしたのは、このときがはじめてだったので少し寂しくもありましたが、成長を感じられてなんだか誇らしかったです。

 

PROFILE 森 幸さん

もり・ゆき。東京都出身。アルペンスキー元日本代表。元全日本スキーデモンストレーター。 東京都スキー連盟副会長、日本障害者全日本スキー連盟理事を経て、現在は全日本スキー連盟理事・日本トライアスロン連合理事などを務めるかたわら、青山学院大学の体育会スキー部のコーチにも注力している。国の指定難病である肺高血圧症を抱える、娘の未瑠加(みるか)さんとの日常の一コマをインスタグラムに投稿している。

 

取材・文/安倍川モチ子 画像提供/森幸