常に注目を浴び続ける中で思うこと

谷亮子

── ところで、10代から常に脚光を浴び続け、いつ、どの大会でも金メダルや優勝を期待されてきました。正直しんどいとか、少し疲れると感じたことはありますか?

 

谷さん:疲れることはなくて、私は逆にメディアの皆さんに育ててもらったと思ってるんですね。インタビューや取材でもいろいろな質問をしてくださるので、そこで自分の目標を引き出していただいたり、自分が置かれている状況を客観的に聞いてくださって報道してもらえたことで、自分の中で覚悟が決まることがたくさんあったんです。長く続けられた理由はいくつかありますが、メディアにたくさん登場させてもらったことも大きいと思います。取材に来てもらいたいと思ってもなかなか来てもらえず、自分の思いや意見を発信できない選手もたくさんいらっしゃって、でもそういう選手の声もすごく重要で。当時、スポーツがそこまで取り上げられることもなかったですし。

 

私の場合は中学3年生のとき、福岡国際女子柔道選手権大会の優勝がきっかけでメディアの皆さんに報道していただけるようになりましたが、世界中から取材に来てくださるので本当にありがたいなと思っています。だから「今日はきついな」とか、「今日は話したくない」といったことは特になくて、今も現役時代も興味を持っていただけるのは嬉しいことだと思うし、自分のモチベーションにもなっています。

 

── 谷さんのお人柄もあって常に応援され続けているのかと思います。

 

谷さん:ありがとうございます!あと、応援したいなって思ってもらえる選手であり続けることが、勝ち続けることでもあるのかなとは思います。柔道で一番最初に習うのが礼儀作法ですが、相手を尊重し、感謝をすることが人としての基本だと学べたことはよかったなと思います。あと、本当は考え込むような大変な状況であったとしても、サラッと乗り越えさせてくれるんですよね。自分ひとりではできないようなことでも周りの皆さんの応援が力になって、あ、いつの間にか乗り越えちゃった!っていけるんですよね。

 

PROFILE 谷亮子さん

たに・りょうこ。1975年生まれ福岡県福岡市出身。 全日本体重別選手権大会優勝14回 、 福岡国際女子柔道選手権大会優勝12回 、 世界柔道選手権大会優勝7回(2年に1度開催) 、五輪5大会連続メダリスト 。2003年に谷佳知さんと結婚して2児の母。

 

取材・文/松永怜 写真撮影/北村史成