キャリア志向から母になって

高橋真麻

── そんな仕事が大好きな真麻さんが、2人の子どもの母に。子育てと仕事の狭間で悩まれたこともあったのでは?

 

高橋さん:もともと私は、入社後5年目ぐらいまでは、皆さんに認知していただいたり、好意的に思っていただけず、つらい時期を過ごしてきました。辛酸を舐めた経験があるので、お仕事がいただけるようになってからは、来た仕事は絶対に断りたくない、すべてやる!というマインドで、フリーになってからの10年間も、仕事に向き合ってきました。ですから、子どもが生まれて初めて、仕事を断らなければいけないという局面に直面し、それがなかなか受け入れられませんでした。

 

子どもが生まれた時点で、地方への出張は難しくなり、泊まりの仕事は絶対に無理。それでも保育園の頃までは、なんとか回っていましたが、上の子が幼稚園(途中から?)に入ったら、今度は、お迎えの時間が急に早くなって、アフタースクールに通わせても、今までのように100%仕事に向き合うことができなくなってしまった。その切り替わりの時期が、私にとって一番ストレスでしたね。

 

── どうやって、折り合いをつけていったのですか?

 

高橋さん:ずっとキャリア志向でしたが、“母親にしかできないことってたくさんあるよね”というところに目を向けたら、視野がグンと広がって、自分のなかでだんだん折り合いがつけられるようになりました。やっぱり子どもにとって母親は私ひとりですし、子どもの成長は本当に早くて、一瞬一瞬が不可逆なもの。ですから、今この瞬間を母親として目の当たりにできるのは唯一無二で、仕事よりもよほど貴重なことなんだと。とはいえ、それでも仕事を断ったり、やりたい仕事が思うようにできないことへの葛藤が数か月くらいありました。

 

ですが、「これはこれで楽しいかも」と今の生活を前向きにだんだん考えられるようになりました。どうせなら、この状況を楽しんでしまおうと、ポジティブにとらえて、新しい経験を吸収しようという気持ちでいます。