不遇の時代を経験した後、アナウンサーとして一気に活躍の場が広がった高橋真麻さん。キャリア志向だと語る彼女が2児の子育てをしながら今、どう仕事に向き合っているのでしょうか。(全5回中の5回)

「積極的受け身」で風向きが変わり

高橋真麻

── アナウンス能力に定評がありながら、不遇の時期を経験された真麻さんの転機となったのが、バラエティー番組でした。芸人さんの愛あるイジりを真正面から受け入れて、個性が花開きました。ご自身は、どんなふうに見ていますか?

 

高橋さん:当時、共演させていただいた芸人さん達のおかげで、今の自分があると思っているので、本当に感謝しかないですね。

 

── 当初、イジられることに抵抗はなかったですか?

 

高橋さん:なかったですね。最初にとんねるずさんが「とんねるずのみなさんのおかげでした」で、私のことをすごくイジってくださって、“ああ、有難いなあ”と思っていました。それまで腫れもの扱いでしたからね。夫にもよく言われるのは、「高橋英樹の娘で、どうせコネ入社だと思われて腫れものに触るような存在だったのを、とんねるずさんがイジってくれたおかげで、『真麻はイジっても大丈夫』という空気になった。とんねるずさんが扉を開けてくれたよね。本当にありがたいね」と、的確に言われて。“いや、私はコネじゃないんですけど…”と、そこはきっちり反論しましたけど(笑)。

 

── 番組で、モジモジ君の全身タイツを着るのもためらいなく…?

 

高橋さん:もちろん全身タイツは、人生で初体験でしたけれど(笑)、会社員として、会社から「やってくれ」と言われたことはまっとうするタイプなんです。フジテレビのお台場合衆国というイベントで、47日間、毎日舞台で歌うという企画に出たときも、みんなから、「真麻さん、カラオケ好きだもんね。マイク握ったら離さないタイプでしょ?」と言われたのですが、あくまでも会社から命じられてやっていたことで「私が歌います!」と名乗り出たわけではなかったんです(笑)。ただ、やるからには一生懸命やりたいという気持ちでいつも向き合ってきました。いうなれば「積極的受け身」という感じですね。

 

──「積極的受け身」でチャンスを掴んでいったのですね。

 

高橋さん:父親が全力で物事に向き合うタイプなので、私もその血を引き継いでいるのかなと思いますね。英樹さんは、私に輪をかけて真面目で、クイズ番組に出ることになったら、事前に一生懸命研究して、勉強したうえで挑むので、いまだに「すごいな」と思います。

 

──「女子アナ歌がうまい王座決定戦」の番組で、ドレス姿で昭和歌謡をムードたっぷりに歌いあげる姿は、強烈なインパクトがありました。

 

高橋さん:あれは、“アナウンサーなのに、ちょっとだけ歌えて、なんだかおもしろい”というギャップから喜んでいただけたのだと思います。番組のスタッフさんたちと一緒に作りあげた結果なので、皆さんに感謝ですね。ちなみに、あのドレスは、新橋にあるクラブのお姉さんたちの行きつけのドレスショップで買っていました。

 

── 衣装じゃなかったんですね(笑)。

 

高橋さん:自前でしたね。1着6000円とか8000円ぐらいだったかな。フリーアナウンサーになった当初は、月に何回、『シンデレラ・ハネムーン』を歌わされたことか(笑)。でも、その後は、だいぶ仕事の内容も変わって、ここ数年は歌っていないですね。

 

そもそも私は、“自分でなにかを生み出せる側”の人ではなく、プレイヤーでしかないので、来た仕事を全力でやるというスタンスに変わりはありません。ですから、0を1にするクリエイティブな人たちをものすごく尊敬しています。