35歳から50歳まで、実に15年間不妊治療を続けたというお笑いコンビ・ハイヒールのリンゴさん。「不妊治療が日常になり、手放すきっかけを見失った」時期もあったそう。卒業して12年経った今、感じていることをお聞きしました。(全4回中の4回)

不妊治療や妊活がデリケートに扱われすぎているかも

ハイヒールのリンゴさん
芸歴40年以上ながら、今も若々しいリンゴさん(本人インスタグラムより)

── リンゴさんは不妊治療のために休業していた時期もあったそうですね。治療のためには仕事はセーブしたほうがいいと判断されたのでしょうか?

 

リンゴさん:私の仕事の場合はそういう選択をしたけれど、一概に仕事を休んで治療したほうがいいとはいえないですね。不妊治療って、人によってすべてのチョイスが違ってくるので、一般論に当てはめること自体が難しいと思います。その人の性格もあるし、仕事の内容、夫婦関係や収入によっても変わるでしょうし。

 

── 不妊治療がつらいと感じるのには、周囲からの「子どもはまだ?」という期待も大きいと思います。そのようなプレッシャーとはどのように向き合えばいいでしょう。

 

リンゴさん:そういうとき、考え方がふたつあると思うんです。たとえば義母からそう言われたとしたら、「お義母さんは私たちに子どもができないことを気にしているんだ」って感じる人もいるだろうし、「お義母さんは私たちのことを心配してくれているんだ」ととらえることもできる。不妊治療とか妊活って、メディアやSNSでもとかくマイナス面がフィーチャーされやすいけれど、もなにもかも悪いほうに考えなくてもいいんじゃないかなって思うんですよ。

 

── 妊娠や出産という話題自体、かなりデリケートに扱われる傾向がありますよね。

 

リンゴさん:少し前に、これから出産・育児休暇を取る女性が「産休をいただきます。ご迷惑をおかけしますがよろしくお願いいたします」と描かれたクッキーを配ったというエピソードが話題になりました。でも私、そういうのはどっちも正解だと思うんです。そういった配慮自体は悪ではないけれど、本当に必要なのか?とも思うし。たしかに不愉快に思う人はいるかもしれないけれど、「ポーンと産んで元気に戻っておいで」って快く送り出す人もいる。私がそうだから。だからそもそも、産休クッキーの賛否を万人に問うこと自体がナンセンスですよ。みんなそれぞれの立場があるんですから。

 

── 女性にとっては、産む・産まないという選択自体が悩ましいと言うか、どちらを選んでも悩みが尽きないように感じます。


リンゴさん:上を見てもキリがないし、下を見てもキリがない。特に上を目指すほどシンドい。自分が一番幸福だって思うようにしていないと。自分が一番不幸だって思い込んでしまうのって最大の不幸だと思うんです。だから不妊治療を行っている女性にも「それはつらいよね」って言わないようにしていました。「つらい」って気持ちを肯定してしまうと、もっと不幸になるから。