妊娠や出産、周りと比べなくなればラクになる

── たしかに周りと比べるのをやめると、ラクになることってありますよね。結局、物事のとらえ方次第というか。

 

リンゴさん:そうですね。何度も流産した友人には、私もかける言葉がなかったけれど…。最終的に子どもを持つことをあきらめたとき、その友人は「(妊娠をしていた)何か月間かは夢を見ることができたわ」と話していて。その気持ちに至るまでには時間かかったと思いますけれど、あぁそういうふうに人に話すんだ、その言葉で彼女はすごいものを乗り越えたんだと思いました。

 

ハイヒールのリンゴさんと愛猫
現在は愛猫タウザーくんと仲良く暮らすリンゴさん(本人インスタグラムより)

── リンゴさんのように、不妊治療をしたものの、結果的に子どもに恵まれなかったことまで包み隠さず世間に伝える方はそれほど多くない気がします。

 

リンゴさん:じつは不妊治療の経験を本に書きませんかっていう依頼もありました。でも絶対に最後はハッピーエンドではないと本として完結できないって言われて、結局その話は流れてしまいました。手に取った方が読んで「私も頑張ろう」って思えないと本が売れないって。

 

今はそのあたりの考え方も、徐々に変わってきているのかなと思いますが、当時はその編集者の中で“答え”がもう決まっていたんですよね。今なら、不妊治療から始まって、更年期障害や閉経期を迎える内容になるのかな。今はまだ赤裸々に人に伝えるには微妙な時期かもしれません。でも、そういう風潮が変わって、いろんな経験をフラットに話せる時代が早く来るといいなと思います。

 

最後にひとつ言いたいのは、「私の人生の正解があなたの人生の正解ではない」ということ。私の生き方が、あなたの人生において少しでも参考になれば、とてもとても嬉しく思います。

 

PROFILE ハイヒール・リンゴさん

1961年、大阪府出身。京都産業大学在学中に、相方のモモコさんとハイヒール結成。女性漫才コンビとして、数多くの賞を受賞。2015年には大阪学院大学大学院商学研究科より名誉博士号を授与。現在も漫才、コメンテーターなど幅広い分野で活躍中。

 

取材・文/池守りぜね 写真提供/ハイヒール・リンゴ