娘が「辞めたい」と言ってきたら…
── 高校入学後は東アジア大会で3位、世界選手権にも出場するなど、一躍注目の選手となりますが、飛び込み競技に対する気持ちに変化はありましたか?
馬淵さん:高校に入り、大きな国際大会に出場するようになってからは、たくさんの方が応援してくださったり、新しい仲間に出会えたり、世界が段々と広がっていくなかで、やりがいのようなものは感じるようになりました。
特に大学入学後はケガによる成績の伸び悩みがありました。そのなかで試行錯誤して自分なりに飛び込み競技と向き合うことで、「辞めたい」という気持ちが少しずつ薄れてきたのと同時に、これが私の生きる道なんだろうなと。
── あのとき辞めなくてよかったという気持ちになることもありますか?
馬淵さん:そうですね。大学卒業後に結婚して引退し出産、そして解説やスポーツコメンテーターなど、さまざまなお仕事にも挑戦させていただけるなかで、飛び込み競技を続けてきたからこそ、今の自分がある、すべてが繋がっていると思えるようになりました。
あのとき「辞めてなにするんや」と言ってくれた父の言葉にも感謝していますし、私も母になり、父も父であのとききっと悩んだのだろうと少しせつない気持ちになることも。
── ちなみに馬淵さんは、もし娘さんたちが習い事などを途中で「辞めたい」と言ったら、母親としてどうしますか?
馬淵さん:それ、すごく考えるんです、今後の課題になりそうだなと。
実は以前に長女がバレエを習っていたときに「辞めたい」と言われたことがありました。理由は「先生が厳しいから」。でも、よくよく子どもを観察してみるとなんとなくまた別に理由があるような気がしたので、気にかけつつも発表会までは頑張ろうと伝えたんです。そしたらその後、実はできない技みたいなのがあったから辞めたかったと、でも今はできるようになったから続けたいと教えてくれました。まずはしっかり話しを聞くことが大切だとは感じています。
PROFILE 馬淵優佳さん
まぶち・ゆか。1995年生まれ。兵庫県宝塚市出身。水泳の飛び込み選手として数々の国際大会に出場する。2017年5月に水泳選手の瀬戸大也と結婚し、同年11月に引退した後はスポーツコメンテーターやタレントとして幅広く活躍。2人の子どもを出産し2021年末に現役に復帰。2024年の2月に引退した。
取材・文/平岡真汐 写真提供/馬淵優佳