土屋炎伽さんは、明治大学応援団バトン・チアリーディング部を卒業後、富士通フロンティアレッツとして活動し、「2019ミス・ジャパン」で初代グランプリに輝きました。コンテストのPR活動でメディア露出が増えてからは、周囲のさまざまな声に落ち込むことも多かったと言います。そんな土屋さんを支えた、ミスコン仲間やご家族の言葉とは。そして、今年1月に事務所を退所した理由、今後の目標についても伺いました。(全3回中の3回)
ミスコン仲間と家族からの言葉が自信に
── 当時は土屋さんのグランプリ獲得と太鳳さんのご活躍が関連づけられることもありました。
土屋さん:そうですね。例えば東京大会のときも、当初、妹は来られない予定だったんです。でもたまたま仕事が早く終わって、私を応援したいと思って急きょ駆けつけてくれたことが「妹が芸能活動をしているからグランプリになったのでは」と表現され、まっすぐ応援してくれた妹に対してもですが、公正な審査に取り組んでくださったすべての方々に対して失礼にあたるような誤解につながってしまいました。グランプリをいただいた機会を大切にしようと思って取り組んだことが結果的には厳しい状況になったこともあったので、応募したときの家族の心配は、大なり小なり当たっていたのだと思います。
── そんなとき、支えになっていたものはありますか?
土屋さん:ミス・ジャパンを通して出会った仲間と経験が本当に素敵で、心の支えでした。よく周りから「ミスコンって、女の子同士いろいろ大変だったんでしょ?」と聞かれるのですが、全然そんなことなくて。ビューティーキャンプ中、私が落ち込んでいたときは「ほのはこういうところが素晴らしいから自信を持ったほうがいいよ」と声をかけてくれたり、みんなで一緒に質疑応答の練習をして「こういう答え方のほうがいいんじゃない?」とアドバイスを送り合ったり、休んでいる子がいたら講座内容をまとめて送ってあげたりと、助け合っていたんです。
なので、もちろんグランプリ受賞はとてもうれしかったのですが、仲間たちとステージをやりきった達成感が強くて、「みんなに出会えて本当によかったな」と思っていました。受賞後も、仲間たちがLINEで励ましてくれたり、インスタグラムのストーリーで「ほのちゃんは誰もが納得するグランプリ」と発信してくれたりして。思い出しただけでもウルっと来るほど、みんなの言葉が自信になりました。
── 出場を心配していらっしゃったご家族の反応はいかがでしたか?
土屋さん:出場する前から心配していたので、受賞後のこともある程度は想定内だったようですが、母は「エゴサーチをする必要はない。あなたのことを知らない人の声を聞くのではなくて、あなたのよさを知っている人の声を聞きなさい」というような感じでした。父は、ひっそりと応援してくれている様子でしたね。
でも、そのときの反応というよりは、そのあとも今もどんなときも、私に思いを伝えてくれるのは家族で。私が精神的に落ち込みそうなタイミングのときはいつも、家族が「ほのは素敵だからね」と言ってくれています。
クイズ番組出演後にバッシングを受けて
──「精神的に落ち込みそうなタイミング」とは、どんなときですか?
土屋さん:どんなときもよく落ちるのですが(笑)、受賞直後のお話で言うと、「ミスコンに出場してどうせ芸能界に入りたかったんでしょ」というような声があったときですね。
ミス・ジャパンのグランプリは、イベントなどの活動に1年間参加すると決まっていて。私がテレビに出ていたのは、芸能界に入りたかったからではなくて、ミスコンの存在をPRするためだったんです。そのキャンペーンの一環で出ていたご縁がたくさん繋がって今に続いているだけなのですが、自分の苦手分野に取り組んだことに対する反応を見ると、「私ってこういう結果を生むために挑戦したはずじゃなかったのにな」とか「本当はこういうつもりじゃなかったのにな」と、すごく落ち込みました。
── クイズ番組出演後は、SNSで反省の弁や思いを発信されました。
土屋さん:あのときは緊張も相まって、秀才の方々と同じようには答えをポンポンと出せなくて。自分としては「クイズは苦手だけれど、落ち込んだら現場の空気を悪くしちゃうかな」と考えていたので、解答を間違えたときに内心では恥ずかしいと思っていても、笑顔でいるように心がけました。でも、その笑顔が「なんでこんな簡単な問題をひとりだけ間違えたのに笑顔でいるの?」と感じさせてしまったり、一般入試で進学した明治大学についても「裏のコネがあるんじゃないか」と、驚くようなコメントをDMでいただいたり。
すべてに反応する必要はないのですが、母校やミス・ジャパンの価値を誤解されてしまう状況を作ってしまったので、「自分としてはこういう思いで取り組んだけれど、空回りしてしまいました」という思いだけはお伝えすることにしました。でも、基本的には楽しくお仕事させていただきましたし、貴重な経験だったと感謝しています。
── 特に印象的だった番組などはありますか?
土屋さん:富士通でずっと一緒だった女子バスケ選手・町田瑠唯ちゃんとバスケットボールの番組に出演させていただいたことは、すごくうれしかったです。瑠唯の密着番組で一緒にご飯へ行くときにちょろっとテレビに映ったことはあったのですが(笑)、2人で共演できたことがうれしくて。「いつか2人で出たいよね」と言っていたので、夢が叶ったなと思いました。
あとは、コロナ禍に行われたホノルルマラソンの番組に出演させていただいたことがあって。私は応援サポーターとしての参加だったのですが、自分が力を注いできたチアで走っている人を元気づけるという役割をもらえたことが嬉しかったですし、心からスポーツを楽しめる時代に一刻も早く戻ってほしいと祈りながら参加させていただいた経験は、本当に素晴らしかったです。ほかにも、舞台で社交ダンスというものにも出会えたので、いろいろな場所で得た出会いは宝物で、大きな収穫だなと思います。
── 今年1月に事務所を退所されました。理由やきっかけを伺えますか。
土屋さん:以前の事務所は自分の意見を最優先にしてくれる場所だったのでとてもありがたかったのですが、芸能活動に限らずよりフレキシブルに活動していきたいという理由で、退所を選択しました。チアの活動を続けつつ、より幅広い活動に対して柔軟に対応していきたいなと思ったことも大きいです。今は弟がフリーなので、可能なときは現場マネージャーをしたり、ライフステージが変わった妹のプライベートや仕事現場で、いろいろとサポートをしたりもしています。
── ごきょうだいと仲のいいご様子が、インスタグラムからも垣間見えます。
土屋さん:私たちの家族は、みんなが忙しいなかでも誕生日やクリスマスなどのタイミングでは集まろうということで、いつもイベントごとに会っているんですね。意外なことに、弟が「太鳳の誕生日はいつ集まるの?」とか「クリスマスどうするの?」などとグループLINEで聞いてくるんです(笑)。それがおもしろくて、妹も「早く決めよう」と返したりして、みんなで仲良くしています。