約17年前「そんなの関係ねぇ」で一躍ブームとなったお笑い芸人の小島よしおさん。最近は日本各地を巡り、年間100本を超える子ども向けのライブを精力的に行っています。以前「一発屋」と呼ばれるも、再ブレイクに至った経緯は。(全5回中の4回)
「子どもにマネされたくない芸人」がコロナ禍で一変
── 小島さんの代名詞とも言えるネタ「そんなの関係ねぇ」の爆発的なブレイクが落ち着いたころ、テレビでの露出が減った時期があったそうですね。その間はどんな日々を過ごしていたのでしょうか?
小島さん:自分がやりたいと思ったことや興味を持ったことに取り組みました。そのひとつが「筋トレ」です。
かれこれ10年以上前のことですが、当時のマネージャーさんに「小島さんはフツーな体型ですよ」って言われて、ハッとしました。さらに、たまたまアンガールズさんと上裸姿でご一緒する現場があって、やせ型の体型が特徴のお2人と並んだとき「あれ?あまり変わらないですね」って、フツーどころかほっそりしていることがわかって…。海パンひとつで仕事しているのに、これはまずいぞと。そこから筋肉をつけることを本格的に始めました。
2014年に「ベストボディ・ジャパン」の名古屋大会に出場した際、「鳥取にすごい人がいる」と聞いて、その方に会いに行きまして。僕の「筋肉の師匠」ですね。細かい角度やフォーム、考え方を指導してもらったり、筋肉に関する知識など、いろいろ勉強しました。体づくりにはとことん時間を使いましたね。
健康にも興味を持ってファスティングもやりました。その流れで食育にも興味を持つように。それまで、タンパク質や脂質がどんな食べ物に含まれているのか知らなかったですし、暴飲暴食して逆流性食道炎で体を壊したりしたこともあったんです。それではいけないなとオーガニック食材を取り入れるようになりました。「野菜の歌」はその頃に誕生しました。
──YouTubeチャンネル「小島よしおのピーヤの休日【ピーヤTV】」で人気の「野菜の歌」ですね。「野菜の歌」は子どもたちから支持されたそうですが、そこから子ども向けのライブをスタートすることになったのですか?
小島さん:子ども向けのライブをするようになったのは、先輩のアドバイスのおかげです。単独ライブは2011年から始めました。「野菜の歌」もシリーズ化して、野菜の種類ごとに毎年1曲はつくるようになっていきました。
ちなみにアドバイスをくれた先輩はてっきり「お前は子どもが好きだし、向いているから」という意味だと僕は思っていたんですが、どうやら違ったみたいで。「お前は何やってもダメだから消去法で提案した」と後から言われていたことが最近判明しました。都合よく解釈するのが僕の長所です(笑)。でも、それがいい方向にいったので、周りの方のアドバイスを聞いて、とりあえずやってみることって大事ですよね。
── 早稲田大学の教育学部ご出身でもいらっしゃいますから、子ども向けの活動をするにあたって、「教育」という側面でも何かビジョンがあったのでしょうか?
小島さん:子ども向けに活動を始めた頃は特にそんな意識はありませんでした。僕はむしろ「子どもにマネされたくない芸人」として、世の中的には「教育によくない象徴」とされていましたから。「子どもの教育云々」というよりも、単純に「子どもが盛り上がるライブをやろう」っていう気持ちのほうが大きかったですね。
ただコロナ禍になったことで、「子どもたちのために何かできないかな」と思うようになりました。そのきっかけをつくってくれた作家さんと一緒に始めたのが、YouTubeチャンネル「小島よしおのおっぱっぴー小学校」。ここで教育動画を始めたんです。そこから世間の見る目が変わってきたかもしれません。
── 2021年からはニュースサイトで子どものお悩み相談に答える連載「ボクといっしょに考えよう」もスタートしましたし、子どもの目線に寄り添った、小島さんの実体験を交えたアドバイスが大人にも子どもにも好評で、書籍化もされています。世間も小島さんに「教育者」のようなイメージを持つ人も増えてきたように感じます。
小島さん:本当に何か意図して始めたことではないんですけど、自然とそういう仕事が増えましたね。と同時に、ライブ会場に子どもたちが増えてきました。コロナ禍で始めたYouTubeチャンネルの効果もあり、時代の変化とともに僕を見る周りの評価が変わっていったのかなと思います。
── コロナ禍で欝々とした日々、元気いっぱいの小島さんの動画を観て救われたお子さんも多かったのではないでしょうか。
小島さん:そうだと嬉しいですね。実際、各地のライブ会場で出会う子どもたちから「YouTube観てます」と聞くと嬉しくなります。最近では「親子2世代で応援してます」と言って子ども連れで会場に来てくださる方も多くてありがたいですね。「僕も長くやっているな」としみじみと思います。