「そんなの関係ねぇ」は当時の彼女のアドバイスで

ライブの様子
ライブの様子

── 事務所に入ってピン芸人として活躍を始めるわけですが、小島さんの代名詞ともいえるネタ「そんなの関係ねぇ」はどのようにして生まれたのですか?

 

小島さん:さくらんぼブービーの木村さんが趣味でDJをしていて、あるイベントの手伝いに行ったんです。そこで「音楽に合わせてラップやってみろ」って言われて、やったら思いっきりスベったんですよね。「何とかしろ!」って言われたのに対して「そんなの関係ねぇ」って言ったら、その日のスタッフがみんなマネして盛り上がって。そういう流れで飛び出した言葉だったので、当初ネタでやろうとは思ってなかったんです。

 

その1か月後くらいにラジオでネタ番組に出ることになりまして。当時、僕がライブでやっていたネタは、服を脱いだり大根のかつら剥きをしながら怖い話をする、というものだったんですけど、ラジオだとビジュアルを見せられるわけじゃないんで、それってやってもわけがわからないですよね。ただの怖い話になっちゃう(笑)。

 

ラジオで披露するネタに困っていたときに、当時つき合っていた彼女が「じゃあ、『そんなの関係ねぇ』は?あれうちでお母さんいつもやってるよ」って。たしかにラジオでもできるなぁと軽い気持ちでやってみたら、そのネタ番組で優勝したんです。それで「これはいけるかも?」と思い、ライブでも披露するようになっていきました。

 

この跳躍力!(Instagramより)
この跳躍力!(Instagramより)

── なるほど、そのときもアドバイスを実行されたわけですね。ネタができてから大ブレイクするまでのスピード感を見ると、挫折知らずという感じですが…?

 

小島さん:いえ、ネタができてテレビに出るまでに1年くらいありました。その間、スゴイ迷走していましたよ。上半身裸でハーフパンツにサスペンダーつけて「そんなの関係ねぇ」と言いながらサスペンダーをパチンパチンとはじいたり。そんな幻の時期もあったんです。

 

── そうなんですね。想像しただけで笑ってしまいました。きっと幻の時代を見てみたい方も多いでしょうね。ブレイクのきっかけはテレビ番組『ぐるぐるナインティナイン』で紹介されてからでした。

 

小島さん:忘れもしません、5月24日です。「ぐるぐるナインティナインのおもしろ荘」がまだ年越しの番組ではなくて、通常回の第1回目でした。番組終わりの数分前、確か19時55分くらいにそのコーナーが始まって、そこで「そんなの関係ねぇ」が紹介されたんです。仲がよかった人と集まって、一緒にテレビの放送を観ていたんですが、「あれ?カットされたんじゃないの?」ってその場の誰もが思うくらい、最後の最後の数分でした。

 

── 紹介されたのはすごく短い時間だったんですね。

 

小島さん:当初はもっと長いネタだったんです。『ぐるぐるナインティナイン』のオーディションでネタを見せたとき、服を脱ぎながら怖い話をして最後に海パンひとつになって「全然怖くなかったー、へたこいたー…どぅるるん、どぅるるん~」という流れでネタを進めていたら、ディレクターさんが「前半部分はいらない。いきなり海パンでやろう」と言い出したんです。

 

それで「全然怖くなかったー」も「へたこいたー」もなくなって、いきなり「どぅるるん、どぅるるん~」の音楽とともに始まることに。唐突で意味がわからないけど、テレビで放送されたらなぜかそれが当たって、一気に注目してもらえるようになりました。

 

これが本当のオーシャンパシフィックピース(Instagramより)
これが本当のオーシャンパシフィックピース(Instagramより)

── たしかに、唐突すぎて意味がわからないかもしれません…。

 

小島さん:実はそれまでにも別の番組のオーディションで何度か「そんなの関係ねぇ」を披露していたんです。でもそっちでは全然ハマらなくて。番組のディレクターさんから真顔で「“そんなの関係ねぇ”は、なんで関係ないのですか?」って言われました。

 

「説明がないとわかりづらい。たとえば、『財布を落としたよ、でもそんなの関係ねぇ、だって財布は空だったから、ハイおっぱっぴー!』とか意味を持たせないとダメだ」と言われたこともありましたね。でも、世間にウケたあとは「そんな意味づけ、いらないです」ってコロッと意見が変わりましたけど。

大ブレイクで生活にも嬉しい変化が

──「そんなの関係ねぇ」はその年の流行語大賞にもノミネートされました。

 

小島さん:『ぐるぐるナインティナイン』に出てからどんどん注目されて、その後、テレビ番組『エンタの神様』に出始めたのが8月。気がついたら年末には流行語にノミネートされていました。その年は本当にあっという間に過ぎていきました。無我夢中で駆け抜けた1年でしたね。

 

── ブレイクして生活は変わりましたか?

 

小島さん:収入が変わりました。ブレイクして3か月経ったころ、初めて収入が40万円くらいに。それまで1桁でしたから、どんどん増えていくときは驚きましたね。あとは、人がイベントに集まるようになったことが一番嬉しかったです。演者が僕ひとりしかいない地方のイベントに5000人集まるとかって初めてで。それでようやく売れたことを実感しましたね。

 

子ども向けイベントにて
子ども向けイベントにて

 

PROFILE 小島よしおさん

1980年生まれ。沖縄県出身。出生後は千葉県で育つ。早稲田大学教育学部国語国文学科在学中より芸人としての活動をスタート。「そんなの関係ねぇ!」「はい、おっぱっぴー」などのギャグで2007年に大ブレーク。『ユーキャン新語・流行語大賞2007』にノミネートされるなど話題を集めた。現在は子ども向けのライブを精力的にこなし、YouTubeチャンネル「小島よしおのおっぱっぴー小学校」「ピーヤの休日【ピーヤTV】」なども人気。著書には、子どもの悩みに寄り添ったアドバイスが好評で書籍化された『小島よしおのボクといっしょに考えよう』(朝日新聞出版)、『最強無敵の雑草たち(10歳から学ぶ 植物の生きる知恵)』(家の光協会)など。

取材・文/加藤文惠 画像提供/小島よしお