「家族は合わせ鏡」自分が変わり、妻や子どもも変わった

── 闘病中は、ご家族の支えも大きかったのではないでしょうか。

 

笠井さん:とても大きかったです。私が入院すると、妻も3人の子どもたちも優しくなったんです。

 

「やっぱり大病するとみんなが優しくなるね」と言うと、妻が「それは違います。自分では気づいていなかったかもしれないけど、あなたはこの10年間、家族が何かを言うとすべて否定語で返していました。“いや違う”、“わかってないな”って。それが入院したら本当に素直になったの。私も子どもたちも、こういうお父さんなら手を差し伸べようと思っただけなのよ。変わったのは私たちじゃなくて、あなたのほうよ」と言われたんです。

 

家族も頻繁にお見舞いに来てくれた

とても腑に落ちました。たしかに子どもたちが幼かったころは、子育てに熱心だったのですが、成長するにつれて、家族よりも仕事に力を入れるようになっていたんです。家族とは合わせ鏡のようなもので、自分の態度が悪ければ、家族からも相応の反応が返ってきます。

 

逆に、日々感謝をして笑っていると、自然と家族も同じようになってくれるんです。まず、自分自身が変わることで、相手も変化してくれるんだと学びました。闘病生活を支えてくれたのは、家族やインスタ、ブログで応援してくれた方々の力が大きいです。

 

PROFILE 笠井信輔さん

かさいしんすけ。1987年 早稲田大学を卒業後、フジテレビのアナウンサーに。朝の情報番組「とくダネ!」を20年間担当後、2019年9月末日に33年勤めたフジテレビを退社し、フリーアナウンサーとなるが2か月後に血液のがんである悪性リンパ種と判明。4か月半の入院、治療の結果「完全寛解」となる。現在、テレビ、ラジオ、講演、がん知識の普及活動など幅広く活動している。

 

取材・文/齋田多恵 写真提供/笠井信輔