交際5か月のスピード婚になった理由

皮のパンツも華麗に履きこなす藤さん

── それは本当に運命的ですね。旦那さんのご両親とはどのタイミングで初めてお会いされたのでしょうか? 

 

藤さん:夫のお義父さんは早くに亡くなられていたのですが、お義母さんとは夫とお付き合いする前から私のコンサートに遊びに来てくださるなど何度か面識がありました。

 

交際が始まってから1、2か月後、夫が年末年始に帰省して報告をしたようで「お付き合いしている人がいる…」とお義母さんに切り出したら「あや子さんでしょ!?」ってすぐ分かったみたい。聞いたら、私が年末のご挨拶でお義母さんに蟹を送ったんですよ。それでピンときたそうです(笑)。母親の勘ってすごいですよね。交際にも喜んでいただきました。

 

── 結婚前からお義母さんも公認で、順調に二人の仲を育んでいったんですね。いつ頃から結婚を意識するようになりましたか?

 

藤さん:結婚を意識と言いますか、デートが終わってそれぞれの家に帰るときがいつも切なくて。一緒に暮らすようになったら、そういう寂しい思いをしなくていいなと思うようになりました。独身生活も長いので、そんな気持ちになるなんてもうないと思っていたのですが、不思議なものですね。

 

── では、プロポーズは藤さんから?

 

藤さん:クリスマスに夫からしていただきましたよ。交際5か月のスピード婚です。でも、なんて言ってプロポーズされたか忘れちゃって、聞くに聞けなくなっちゃってるんですよ。前にさりげなくその時の言葉を聞き出そうとしたんですが、「あれは1回きりだ」ってきっぱり言われて。「“ずっと一緒にいよう”みたいなこと言ったよね?」と聞いたら、まさか覚えてないの?みたいな顔をされたので、違うみたいです(笑)。

 

結婚を周囲に報告した時は、私の再婚にずっと反対していた娘も、今回は「幸せならそれが一番だよ」って言ってくれて嬉しかったですね。孫は、当時はちょっと不安そうな顔をしていましたが、今では夫とも仲良しで二人でお出かけもしたりしていますよ。

 

愛猫と穏やかなひととき

── 結婚後も旦那さんのお母さんとの関係は良好だったそうですね。

 

藤さん:結婚後もとてもよくしていただきました。お義母さんは数年前にがんで他界されたのですが、それまでは毎月のように夫とお義母さんと3人で温泉旅行など行きましたね。思い出をたくさん作りました。

 

ホスピスに入られたあともたくさんの時間を共有させていただき、お義母さんが息を引き取る瞬間も側にいることができ、夫と夫の姉と私の3人で一緒にお義母さんの体を拭いて、髪の毛も整えさせていただいてお見送りをしました。

 

── 家族の温もりに溢れた時間が伝わってきます。お義母さんは藤さんのことをなんておっしゃっていましたか?

 

藤さん:最後の旅行で有馬温泉へ行った時に、お義母さんが温泉に入りながら「私こんなに痩せちゃったのよ」っておっしゃるので「大丈夫よ、こうやってここまで一緒に来られたんですから」と言ったんです。その後、温泉からあがったお義母さんの髪をドライヤーで乾かして差し上げてる時に、鏡越しに私に微笑みながら「私は世界で一番幸せ者ね」と言ってくださって。なんだか…嬉しかったですね。夫と結婚して、そんな風に親孝行まで経験させていただきました。

 

PROFILE 藤あや子

1961年生まれ。秋田県角館出身。1989年にシングル「おんな」でデビュー。代表作はシングル「こころ酒」「むらさき雨情」など。ユニークな愛猫との日々を綴ったSNSも大人気。カバーアルバム第3弾「Ayako Fuji Cover Songs 喝彩~KASSAI~」も発売中。

 

取材・文/平岡真汐 写真提供/藤あや子