娘の制服をマンションのごみ捨て場に

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── 厳しい藤さんの一面に対して、娘さんが反発するようなことはありませんでしたか?

 

藤さん:反抗期はありませんでしたが、ぶつかったこともありますよ。娘が高校生のとき、突然「学校に行きたくない」って宣言されたことがありました。前日まで普通に通っていたのに。イジメではなかったようですが、「何があったの?」って聞いても何も答えないんですよ。理由どころか返事までしないの。長い時間をかけて向き合っても何も話さないし、本当に学校もお休みするので、私もしびれを切らして「分かった。本当に行きたくないのね」と言って、その日の夜に制服をゴミ袋に入れて、マンションの地下にあるごみ捨て場に持って行ったことがあります。

 

── ごみ捨て場ですか!?

 

藤さん:娘がその態度ならこっちも真剣に向き合おうって思ったんです。ちょっと極端ですけどね。そしたら、翌朝「ママ、私の制服がない!どういうこと!?」って。「行きたくないって言うから捨てたよ」って言うと、大慌てで娘が拾いに行って、その日から普通に学校へ行ってました。行きたくなかった理由は最後まで分かりませんでしたが、本人の中で何か思ったことがあったのでしょうね。私もそれ以上は聞きませんでした。

 

耳を傾ける優しさもありつつ、「このままじゃダメだな」と思った時には慌てず動じない。シングルマザーとして育てていたこともあり、父親としての役割も果たそうと、子育てでは優しさと厳しさ、両方の面をすごく大切にしていました。

 

── そんな娘さんにもお子さんが誕生。藤さんはお孫さんのこともとっても可愛がっているそうですね。

 

藤さん:かわいいですよ。一緒にマルキュー(SHIBUYA 109)も行っちゃいましたしね。私が持っているブランド物とかも欲しいって言われたら、すぐあげちゃう。これもいいな~って言われたらもっとあげようか?なんて。

 

娘はそれ見て「私にはあんなに厳しかったのに!」って怒るの。確かに娘にはあげたことがなかったんですよ。ファンの方から、娘さんにプレゼントをいただいても、自分で買えるようになってから持ちなさいと取り上げて私が使ってそのままみたいね。だから「この違いはなんなの?」っていつも言われています。

 

娘は私が孫を可愛がってることに少し嫉妬してるんじゃないかしら。そんな風にやきもちをやいている娘もまた可愛いですけどね。でも孫は違いますよ、甘くなっちゃうのはしょうがないですよね。

 

PROFILE 藤あや子

1961年生まれ。秋田県角館出身。1989年にシングル「おんな」でデビュー。代表作はシングル「こころ酒」「むらさき雨情」など。ユニークな愛猫との日々を綴ったSNSも大人気。カバーアルバム第3弾「Ayako Fuji Cover Songs 喝彩~KASSAI~」も発売中。


取材・文/平岡真汐 写真提供/藤あや子