シングルマザーとして娘を育てた藤あや子さん。娘が思春期の頃は母と娘でぶつかり方も真剣だったと言います。(全5回中の1回)
シングルマザーとして26歳で上京、全国を飛び回り
── シングルマザーとして秋田で民謡歌手をしていた時、スカウトをされて26歳で娘さんと上京されたそうですね。当時、娘さんはまだ6歳だったそうですが、音楽活動と子育てをどのように両立していましたか?
藤さん:上京してすぐは、新人歌手として全国をキャンペーンで毎週飛び回っていましたので、娘と会う時間も限られていました。当時は父が一緒に秋田から上京して子育てなど全面的にサポートしてくれていたので、身内が見てくれている安心感は大きかったですね。
ただ、娘はまだまだ母親を欲しがる時期。離れていても私の存在を感じてもらいたいと、地方に出る前には何日分もの料理を作り置きして、手紙も書いて必ず残してきました。娘が寝る前には必ず電話をしてコミュニケーションをとっていましたよ。
── どんなことをお手紙に書いていたんですか?
藤さん:それがですね、絶対に田舎には帰れないと寝る間も惜しんで各地を飛び回っていて、あまりの忙しさに当時の記憶がほとんどないんですよ。でも、娘は「前向きな言葉を手紙に書いてくれてた」とか「学校であった出来事をよく聞いてくれてたんだよ」って言ってました。娘が落ち込んでいた時も、いつもプラスになるような言葉を伝えていたようで「ママの言葉にいつも勇気づけられていたよ」って。私の前向きな考え方が娘にも伝わっていたのかなと思うと嬉しかったですね。意外にいい母親していたみたいです(笑)。
── 子育てではどのようなことを大切にしましたか?
藤さん:基本的なことだけですよ。ご挨拶をきちんとする、嘘をつかない、ズルをしないとかね。人って失敗したことなど、マイナス面を人に隠そうとするじゃないですか。でも、「できなかったことはしょうがない。正直に言ってくれたら、どうしたらできるようになるか、一緒に考えてあげられるからとにかく嘘のない関係性を作ろう」って伝えていました。これは娘だけではなく、孫もうちのスタッフにもそう伝えています。
── お話しを聞いていると“優しいお母さん”という印象を受けますが、厳しい一面はありましたか?
藤さん:いえいえ、結構厳しかったですよ。細かいことを言うタイプではありませんでしたが、自分のことは自分でできる女性になってもらいたいと、小さい時から料理や家事など生活面のことはしっかり教え込んでいました。
高校生の時は家事も分担して、娘は家の片づけや洗濯物の他、私がファンの方から頂いたお花のお世話まですべて終わらせてから学校へ行っていましたよ。朝の短い時間でそれを全部やるんですから、すごく大変だったと思います。
でもひとり暮らししてからはラクだったみたいですよ。「なんでもできるから、あの時やっておいてよかった」って言っていました。