母になっても「ライブにも賞レースにも出たい」

── 著書出版やラップバトルの番組出演など、活躍の場を広げてらっしゃいますが、結婚と出産をされたことで見つかった新境地はありますか?

 

紺野さん:それがあったらいいなと思ってたんですけど、やっぱりなかなか簡単には見つからなくて。どうしても今の状況を生かすとなると、子どもについて発信することになると思うんですけど、見せたくなくて。まだ性別も言ってないので、ちょっとでも写したら服の色とかで分かっちゃうかもしれないじゃないですか。ただ、ラジオとかで不意に聞かれたときに「いやあ、それはご本人にお任せします。性別は本人が決めることなんで」とか言って「もういいって~!」みたいな空気になっちゃうのも申し訳ないので、いろいろと考える必要があるなと思っています。

 

ママタレを見るのは大好きで、私も1度YouTubeで「きょうの献立」とかしてみようかなって思ったこともあったんです。でも、私が作る料理ってすごく茶色くてマジで映えないし(笑)。「あー!やっぱり、あのときのお笑いが楽しかったよ…」みたいな気持ちになっちゃう瞬間もあって、正直少し後悔することもありました。

 

育児中、ラップはすごく楽しかったです。子守歌みたいな感じで、寝かしつけのときにビートをかけてラップの練習をすることがすごく有意義で。寝かしつけの時間って何もできないじゃないですか。“ながら”でできて、やりがいがあって楽しかったので、続けていきたいですね。

 

著書の執筆作業を進める紺野さん

── 今後の目標を聞かせてください。

 

紺野さん:子どもが大好きなので、教育番組に出たいです。Eテレを見ていると、障がいの有無とか育った国とか人種とか関係なく、いろいろな人が番組で活躍していることが分かって、「みんな同じ」みたいなテーマ性を感じることができて。「ならば、下ネタをやっている私にも!」という思いが出てきたんですよ(笑)。アカデミックな性教育の番組とか、今通信制大学で学んでいることを生かせる番組とかをやってみたいです。

 

あとは、やっぱり思い浮かぶのはネタですね。ライブや賞レースに出ていきたいです。私はたぶん世間から見て「親族は何て言っているの?」って言われる立ち位置だと思うんですけど(笑)、尖ったことをしていても黙らせられるくらい、子どもが納得するような活動を続けていきたいです。子どもや主婦という部分を使わずにネタを作ることは本当に難しいんですけど、それができるってすごいなと思うので、続けていきたいです。

 

── 学校に行きたくない気持ちを抱えた小学生のころ、中退を経験した高校生のころを経て、同じような状況下にいる方々へ、メッセージをお願いします。

 

紺野さん:うーん。学校、嫌ですよね。私も行きたくないと思う時期がありました。それってたぶん「どうせ学校に行っても、行きたくない気持ちが変わらない」と思っているからなんですよね。でも「行きたくない」を共有できる友達が、もしかしたらいるかもしれません。人って共通の敵を見つけると、めっちゃ仲良くなるじゃないですか。だから1度行ってみて、「行きたくない」を共有できる友達が見つからなかったら行かない、辞めるっていう考え方でもいいのかなって思います。

 

この世には、似てる人がたくさんいるらしいんです。だから、自分の思っていることをそのまま吐露すれば、誰かには刺さるかもしれないです。本音をギュっと我慢するんじゃなくて、1回だけ、ちょっとそういう人がいないかなって探してみるのもいいと思います。もちろん、嫌だったら辞める、逃げるという選択肢も入れて。選択肢がないとつらいと思うんですけど、選択肢があるかないかで心持ちはすごく変わる気がします。

 

私は退学して1か月後に「やばい!今まで恵まれてたんだ」って気がついたんです。学校で勉強できることは恵まれているんだ、怒ってもらえることはありがたいんだ、愛されている証拠なんだ、規則があるのはまだ期待されているからなんだって分かって。親が言っていた「毎日行く場所があるのはいいことなんだよ」という言葉の意味が理解できたんです。だから、逃げるという選択肢も持ちながら、模索してみてほしいなと思います。

 

あと、いじめに遭っているなら、全然行かなくてよくて。通信大学って、マジで楽しいです。学習センターみたいなところに行くと、白髪のおじいさんもいるんですよ。やっぱり人って学ぶことが楽しいんだな、知りたいことがあるとその気持ちを満たすのって生きる糧になるんだなと思います。

 

── 最後に、「子育て」なぞかけをいただけるとありがたいです。

 

紺野さん:子育てとかけまして、おっぱいと解きます。その心は、どちらも揉まれて大きくなるでしょう。

 

PROFILE 紺野ぶるまさん

1986年生まれ、東京都出身。松竹芸能東京養成所を経て、2010年にデビュー。「ABCお笑いグランプリ」や「R-1ぐらんぷり」、「THE W」で決勝進出を果たした。著書に『「中退女子」の生き方~腐った蜜柑が芸人になった話』(廣済堂出版)、『下ネタ論』(竹書房)、『特等席とトマトと満月と』(幻冬舎)がある。2019年に会社員男性と結婚し、現在は1児の母。

 

取材・文/長田莉沙 写真提供/紺野ぶるま