映画『らせん』で貞子役を演じた佐伯日菜子さん。ホラー俳優として活躍するも、ホラーのイメージに固定することに葛藤も抱えたと言います(全3回中1回)。
月30冊以上小説や漫画を読んで
── 20代で『らせん』の貞子役をはじめ、数々のホラー作品に出演。“ホラークイーン”と呼ばれていました。
佐伯さん:映画『リング』『らせん』のヒットを皮切りにジャパニーズホラーブームが訪れて、映画、ドラマ、ゲームなど、あらゆるエンタメでホラー作品が制作されていました。私も貞子役を機にホラー作品のオファーをたくさんいただき、一時期は来るオファーすべてホラー作品で、私と言えばお化け役担当のようになっていましたね。
いまだにそのイメージが強すぎるみたいで、普段も全然表情を変えない人とか怖い人って思われがちなんですが、普段の私はすごくおしゃべりで、よく笑うし、なんか変なジョークとかも言ったりするので、初めて会う人に「イメージと全然違う」と驚かれます。どんなジョークを言うか?それはあまりに恥ずかしいので言えません(笑)。
── もともとホラー作品に馴染みはありましたか?
佐伯さん:伊藤潤二先生や御茶漬海苔先生、小林ぽんず先生など、ホラー系のマンガがすごく好きで、特に好きなマンガは伊藤先生の『楽しい夏休み』。そこに出てくる「双一」というちょっと変わった少年が大好きで、伊藤先生にお会いしたときにその話をしたら、サイン色紙に双一の絵を描いてくださり今も大切にしています。
また、ホラーに限らずマンガや小説が大好きで、有吉京子先生の『SWAN』というバレエのマンガやコバルト文庫も好きでしたし、花井愛子先生や折原みと先生もよく読んでいました。私、結構な速読王なんですよ。漫画を読むぞ!と思ってお風呂に入るときは、お風呂に4巻ずつ持ち込んで一気に読むとか、1回のお風呂で2時間くらい入ってました。
── のぼせそうですが、大丈夫でしたか?(笑)
佐伯さん:たぶんお湯から出たり入ったりしていたとは思いますが、1日1冊くらいは何かしら読んでいたので、月に30冊以上は読んでいたと思います。実家にもまだ本がたくさんありますね。
──『らせん』の話に戻りますが、貞子役ではヌードシーンにもチャレンジされました。
佐伯さん:当時の事務所の社長たちも少し足踏みしていましたが、私は10代でしたし“怖いものなし!”だったので「貞子役やります!ヌードも全然大丈夫です」と前のめり。社長が「よく話し合おう」とすごく焦っていたのを覚えています。
ちなみに貞子は怖いというイメージを持つ方が多いと思うのですが、本当はとても悲しい運命をたどった実在する女性がモデルになっていたんですよ。演出家の方からその話を聞いて挑んだ井戸の中のシーンでは、特に霊感があるわけではないのですが何かがすーっと自分の中に降りて来て、すごく悲しい気持ちになりながら演じたのを覚えていますね。
── 人気は海外にも広がり、台湾や香港のテレビ番組などにも出演されたそうですね。
佐伯さん:アジア全体がジャパニーズホラーブームで、台湾のバラエティ番組でお化けコンテストの審査員や、香港版ゴーストバスターズの様な人気ドラマにも出演しました。ゴーストバスターズが各国のお化けと戦うという設定で、私は日本代表お化けの貞子。アクションあり、ラブロマンスあり、ホラーありでおもしろかったです。