ダルビッシュ有の母、郁代さん。長男の有、次男の翔、そして三男の賢太。それぞれが安心して生活し始めた最中、突然、三男の病気がわかって──(全6回中の6回)。
2022年に精巣がんと診断され
── 郁代さんは3人の息子さんのお母さんです。長男がダルビッシュ有さん、次男が翔さん、そして3男が賢太さん。賢太さんは3兄弟の末っ子として、お母さまから見てどんな立ち位置だったと思いますか?
郁代さん:個性の強い兄に囲まれて、大変やったとは思います。次男の翔は何度も逮捕されて少年院に入ってますし。兄の有は悪さはしないですけど、何かあれば話題になって、スキャンダルを書かれる。心労という意味では有も翔も一緒です。
いっぽう賢太は「野球で英雄的な兄と、悪さで名をはばかせた翔、じゃあ自分は何で名前を残せばいいの?」って、何回も思ったって言ってました。今は笑いながらそんな話もできますけど、賢太は賢太なりに思うことはあったんじゃないかな。あと、私が子どもたちのことで大変そうにしている姿をずっと見てきているので、自分はこれ以上、迷惑をかけてはあかんみたいな、そんな心のブレーキはあったみたいですね。
── 三男の賢太さんは、郁代さんと一緒に過ごす時間が長かったのでしょうか?
郁代さん:賢太はずっと家にいました。「母親があれだけ大変なことをたくさん乗り越えてきてる姿を目の前で見てきたので、尊敬してる」と言ってくれましたね。
── 賢太さんは、「マミー大好き!」と人前で公言するなど、愛情表現が豊かな印象があります。
郁代さん:かなり豊かですよね(笑)。長男や次男は全然そんな出し方はしないので、賢太のその姿を見ると「お前何しとんねん!」って感じだと思いますけど。兄弟でも全然違いますね。
── 兄弟それぞれが自立してやっと穏やかな生活になったと思えた頃の2022年、賢太さんが精巣がんを患いました。まず、病気が発覚したときにどんなことを思いましたか?
郁代さん:この子はこういう形で心配させるんやって思いました。三男はどっちかっていうと親子仲良くしてきた部分があって、まぁ大丈夫かって思っていたところに、こちらがどうにもできないことが起きたので。子どもって、それぞれ形を変えて親を心配させるんだなって思いましたね。
── 賢太さんが入退院を繰り返す中、2023年に兄の有さんがWBC出場のため帰国。コロナ禍や賢太さんの体調など、いろいろな制限がある中で、どうにか対面することができたそうですね。
郁代さん:有が京セラドーム大阪で強化合宿をすることになって、ビスタルーム(特別観覧室)を用意してくれたんです。賢太の体調もよく、病院が外出許可を出してくれて、奇跡的に兄弟で会うことができました。
有はもともと言葉数が多くないのですが、試合前に賢太を見舞って、「身体、大丈夫なん?」って言葉をかけていて、賢太はとても喜んでいました。有自身も賢太の顔が見れてホッとしたんじゃないですかね。次男の翔ももちろんずっと心配していました。賢太は退院後、翔が大阪の西成でやっている炊き出しの手伝いにも行ったりしてました。