NPO法人を始めようと思ったわけ
── ところで郁代さんは、2018年にNPO法人ウインウインを設立し、不登校時や発達障害児とその家族の居場所作り、英語指導などに取り組んでいます。また子ども食堂も始められているんですよね。社会貢献を始めようと思ったきっかけはあったのでしょうか?
郁代さん:その時はまだ賢太ががんにはなってなかったんですけど、有がいろいろな人に応援してもらって今まできたし、翔も大変な時期はあったけれど周りの人にお世話になりながら今は頑張ってる。昔から子どもたちがある程度落ち着いてきたときに、何か恩返しができるようなことをやっていく使命があると思ってたんです。
自分には何ができるかと考えたら、私の場合は英語を使って子どもたちを支援したり、国際交流ができるようなことだなと思って。
── 英語や国際交流は、郁代さんが海外の大学に進学されたことや、ご自身で英会話教室を開いていた経験から繋がるのでしょうか?
郁代さん:それもあります。あと、うちの子たちは主人が外国人だったのでハーフと呼ばれながら生きてきて、いろいろ思うところもあったと思うんですよ。日本って特に画一的な国で、常識も1種類なんです。その常識をみんなが信じていて、そこから外れると常識はずれと言われてしまう。
でも、その常識はずれが海外では案外、常識だったりすることもあります。多様な価値観を知っていれば、小さな理由からいじめに繋がるようなことも起きないんじゃないかと。堅苦しい、四角い中でだけで生きるんじゃなくて、もっと枠を広げるような考え方を持って欲しい。そう思って英語指導をしています。
── 子ども食堂は継続されていますか?
郁代さん:今は子ども食堂というより、知ってる子たちが何人か来て、一緒にご飯を食べていて。困っている子どもだけに声を掛ける感じではないです。何年か前までは子ども食堂という言い方をしていましたが、今はそういう言い方もしてないです。自分の中では子ども食堂の役割は終わったと思っていて。コロナ禍もあって徐々に人を減らしながら、少しずつ形が変わっていった感じですね。
── 息子さんたちもそれぞれ社会貢献をされています。有さんは子どもの頃から寄付もされてきたそうですね。
郁代さん:普通の家庭の中でできることはしようっていうのはあったと思うので、寄付活動とか特別なことではなく、普通にできることはしてきました。
有も10歳くらい頃から寄付していたみたいだし、翔もYouTubeを始めて、そこからの縁で炊き出しを始めることになったみたいです。最初は炊き出しに誘われて「え?」って思ったらしいですけど、背中を押してもらって始めてみたら、すごく自分が学ぶことが多かったって言ってましたね。
今はそれぞれ大人になりましたが、男の子って本当に読めないですからね。あんまり心配しててもキリがないので、あとはもう自分達で学んでくれ、とは思ってます。
PROFILE ダルビッシュ・セファット・郁代さん
長男・有、次男・翔、三男・賢太の三兄弟の母親。夫はイラン出身の実業家、ダルビッシュ・セファット・ファルサ。NPO法人ウインウインを設立。現在は代表理事として、子どもから大人まで多くの世代が交流できる場、心の休まる居場所の提供を目指す活動などに取り組んでいる。
取材・文/松永怜 写真提供/ダルビッシュ郁代