ダルビッシュ有の母、郁代さん。次男の翔は、中学3年生で初逮捕され少年院へ。その後も気苦労が絶えなかったと言いますが、人との出会いで徐々に変化をしていったと語ります(全6回中の5回)。

どんどん悪い友達と繋がるようになって

── 次男の翔さんは中学生あたりから素行の悪さで目立ち始め、中学3年生で初逮捕、その後、少年院に入った時期もありました。まず、長男の有さんは弟の翔さんに対してどんな風に接していたのでしょうか?

 

郁代さん:有が中学3年生のときに翔が中学1年生で、その頃から翔はだんだんと帰宅時間が遅くなっていきました。有は野球で忙しかったし、翔のことで一回一回、口を出すようなことはなかったと思います。ただ、あまりにも度を超えたときに「お前いい加減にしろよ」くらいは言ってたと思いますけど。

 

── 翔さんの悪さは地元でも知られる存在になっていったそうですが、兄弟の関係性に変化はありましたか?

 

郁代さん:他のお母さんにも聞くんですけど、男の兄弟ってある程度、縦社会があって、外からはすごく大人しそうなお兄ちゃんに見えても、下の子たちはお兄ちゃんに逆らえなかったって。うちにもそれはあったと思います。

 

有は高校から全寮制の学校に進学したので中学卒業後に家を出ましたが、夏休みや年末には帰省していたんです。そのときに翔が家に帰ってこない日があると「すぐに帰ってこい!」と翔を呼び出して、翔を怒ってた、みたいなことは聞きました。

 

ただ、普段は有も家に居ないし、翔もどんどん悪い友達と繋がるようになって、歯止めが効かなくなっていった感じはありましたね。

 

── 翔さんは中学卒業後に定時制の高校に入学。しかし入学早々に学校内で生徒と喧嘩になって、入学から1週間で無期停学に。入学から1か月後には退学して、少年院に1年強入ったそうですね。

 

郁代さん:翔は何度も問題を起こしていて。鑑別所か少年院か、どのタイミングかは忘れましたけど、「一緒に死のうか」って話はしました。翔がどう思ったかわからないけど、翔ひとりで逝かせんよって。覚悟を決めて一緒に死のうかって話は何度かしたことがあります。

 

左から次男の翔、祖母、父、有

── その後、少年院を出所して徐々に更生されていったそうですが、翔さんが26歳のときに野球賭博で逮捕されました。その頃すでに有さんはメジャーリーグで活躍中でしたが、このことがきっかけで大きく報道されたのでしょうか?

 

郁代さん:もうその前から何度も報道されてますね。「ダルビッシュ有の弟が何か問題起こした」って。ただ、たしかに野球賭博で捕まりましたが、逮捕よりもっと前から普通に仕事をして、普通に生活もしていたんです。

 

少年院を出た後も多少のヤンチャはしていて、摘発された当時は仲間内だけで賭けをしていたようです。それが、どこかから警察に情報が流れて、よからぬ人と繋がっているんじゃないかということで逮捕されました。

 

逮捕された日は、警察官が夜に家に来て。警察の車の後部座席に乗った翔がだんだん小さくなっていく姿は、まるで殺人犯が連行されていくような感じでした。翔はすごく怒っていましたが、私は「まぁ、いいやん」って。「大概いろんなことやってきてね、積み重ねもあるししゃーないやんって。もう自業自得なんだから、それも含めてこれからは周りに何か返せるくらい、しっかり頑張ろう」っていう話はしましたね。

 

ただ、裁判の中で、すごく異例なケースみたいですが、裁判長が最後に「仲間内の賭け事に留まり、違法性は高くない」とはっきり言われました。