「どうやって育てていけばいいの」と悩んでいた時期があると語る俳優の相武紗季さん。助け合っていたというママ友の存在や子育てを通じて変わった価値観について伺いました。(全3回中の3回)
お迎えに行くのが憂鬱だった
── 子育てまっただ中ですが、産後から現在を振り返って、最も大変だった時期はいつでしたか。
相武さん:下の子がイヤイヤ期だった、おととしくらいが一番大変でした。お兄ちゃんは5歳頃からグンと落ち着いたのですが、それまでは「どうしてこんなに話が通じないの?これからどうやって育てていけばいいんだろう」と思っていたくらいだったんです。
── 相談できる人はどなたかいましたか。
相武さん:母には話を聞いてもらっていましたし、姉もちょうど娘と同い年の女の子がいたので、姉妹で悩みを共有していていました。それに、同世代の友人がたくさんいて、男の子のママ友も多かったので、「うちの息子、話通じないんだけど大丈夫かな」、「うちもだよ、何歳になったら話通じるんだろうね」なんて盛り上がって。
そういうちょっとした会話でつらい時期を乗り越えられたと思います。息子は今ではもう、自分のしたいことを口で伝えてくれますし、本を読むなど自分の世界も持つようになったので、かなり楽になりました。
── 子育て中の友人の存在は大きいですよね。
相武さん:お互いに支え合っていたと思います。家の近くに住んでいる友人とは、近くで一緒にご飯を食べて、そのまま友人の家で、みんなでお風呂を入れて。家に帰ったら子どもたちを寝かせるだけにするのですが、その合間に母親同士も1杯だけお酒で乾杯して。少しの時間でも、息抜きができていたので救われました。
── 具体的には、お子さんのどんなことに悩んでいたのですか。
相武さん:息子がやんちゃで、落ち着きがなかったことです。保育園から「走ってぶつかって、ケガをしてしまって…」と電話がかかってくることも多くて。それも1か月に1〜2回の頻度で、ケガでお迎えに来てほしいという電話がありました。そのほかにも「お友達とこういうトラブルがあったので、お家で話してみてもらえませんか」と言われることもよくあって。
── それは気が気ではないですね。
相武さん:電話でもひたすら「申し訳ありません、すみません」と謝って、そこからお迎えに行くのがすごく憂鬱でした。その時に限って娘は風邪で熱が出ているなんてことも。病気の娘を抱えて息子を迎えに行く時の絶望感と言ったら…。今の息子は当時では考えられないくらい落ち着いていて、学校からも特に何の連絡もないので、むしろ「何しているんだろう」なんて逆に不安になるんです(笑)。
あまりに心配だったので先生に「うちの子大丈夫ですか?」と聞いたら、「毎日、友達と楽しく遊んでいますよ」と。それを聞いたら今度は、「ケガをせずにどうやって?」なんて無駄な心配もしてしまって。以前は、いいことではないにせよ、日々情報が入ってきていたんですけど、今はまったく何をしているのかわからないです。
いくらわんぱくでも、本人がもういいと思ったタイミングで落ち着くものなんですね。過ぎ去ってしまえばいい思い出になるんだと感じているところです。
── 振り返るとあっという間ですが、渦中のときはつらいですよね。
相武さん:年上のお子さんがいるママ友に、「いつになったら落ち着きますか」と聞いたことがあったんです。そしたら「何歳になっても落ち着かないよ、そんなもんだよ」と言われて。その時は「え〜!」と思ったのですが、今になるとその意味がよくわかります。
たしかに落ち着きはしないのですが、子どもは自分や友達との世界を持ち始めると急にママから離れていくんです。特にお兄ちゃんは、外の世界で揉まれて、お友達との関係で学ぶことも多いですし、周りから学ぶ方が男の子は腑に落ちることが多いのかなと思うこともあります。
「こういうふうになりたい」という身近なモデルがいると、真似しようともして。この先もしばらく手はかかると思うのですが、子どももだんだん自分の世界ができていくので、それをサポートしてあげられたらなと思います。
── 息子さんとはどうやって向き合ってきたのですか。
相武さん:息子の言い分を必ず聞くようにしていました。そのうえで、時間をかけてちゃんと話し合って納得させてきました。通じないだろうなと思いながらも毎日毎日、声を掛け続けて良かったと今は思っています。その時はしんどかったですけどね。
息子は体が大きいので、例えば誰かに押されて押し返したとしても、力が強いんです。「あなたの体とお友達の体は違うんだよ」ということも何度も説明してきたのですが、6歳になった今は納得できることも多いみたいで。「お友達にこう言われてちょっと嫌だったけど、僕の方が力が強いから我慢したよ」なんていうこともあります。
── (拍手)日々の積み重ねが実ってきていますね!
相武さん:こうやって、まだまだこれからもひとつひとつ積み重ねていくものなんだろうなと思います。