芸歴1年目でTHE Wの決勝に進出し、注目を集めているお笑い芸人の「はるかぜに告ぐ」のお二人に大学卒業後の社会人経験エピソードからNSC入学後の生活について伺いました。(全3回中の1回)

コロナ禍での社会人生活は

── 大学卒業後、社会人として働いたそうですが、どんな仕事をされていましたか。

 

一色といろさん(以下といろさん):私は大学を卒業した後に2年間ウェブ系の会社でディレクターとして働いていました。いずれはフリーランスになりたくて、会社は2〜3年で辞めるつもりでした。そもそも就活でも2社ぐらいしか受けてないんですけど、インターシップに行ったところの採用試験を受けました。

 

結構大きい会社で、社員数も多く、働く時間も決まっていて。すぐに辞めたとしても、後腐れなさそうだなって。広告の仕事を希望して採用されたんですけど、コロナ禍で広告の仕事がなく入社後にウェブディレクターに職種が変わってしまったんです。なので、すごくしたい仕事をしていたというわけではありませんでした。

 

一色といろさん
面影ある!ウインク姿が可愛い、一色といろさんの幼少期

── コロナ禍でスタートした社会人生活でしたね。

 

といろさん:2020年4月入社で、そこから2年間は完全に在宅勤務だったので、上司や同僚に会ったのも年に2、3回です。会社で働いているという実感はありませんでした。今は知り合いのところで事務をしています。

 

── とんずさんはどうですか。

 

とんずさん:単位を落として大学を1年留年したので、就職の内定が決まっていたものがダメになってしまって。芸人になるのは中学からの夢だったんで、留年している間に、M-1グランプリとかキングオブコントの予選に出たら、おもろいなと思ってNSCに入ったんです。その頃、 知り合いがゴルフ系の会社を起業して社員にならないかと声をかけてくれて、「そんなすぐ売れへんだろう」と思っていたのでNSC(吉本興業の養成所)と同時並行で、入社しました。

 

とんずさん
すでに芸人魂が炸裂しているとんずさんの幼少期

夜に先輩と行く飲みは絶対に断りたくなかったので、昼に安定して仕事ができるっていい作戦や!と思ってたんですけど、想像以上に忙しくて。NSCと両立しながら昼働いて、夜飲みに行くと次の日の昼はもう働けないんですよ。営業として入ったんですけど、仕事ができないので途中で在宅の広報に変えてもらって、社内報などを作っていました。「誰々さんちのワンちゃんが1歳になりました」とか「フローリングが新しくなりました」っていうのを書いてました。

 

── 社内の雰囲気はいかがでしたか。

 

とんずさん:めっちゃよかったです。自分ができなすぎて他の社員さんが「ポンコツのために頑張ろう」って雰囲気だったんで。みんなすごく優しくて、「忙しくてお昼ご飯、食べてないでしょ、一緒に行こう」って誘ってくれたり、会社はほとんど行ってないんですけど、「飲み会だけは絶対来いよ」って言ってくれたり。本当、いい会社でした。忙しくなって去年の10月末に退社して、そのあとは他でバイトをしています。

 

── お話を聞いているとお二人の会社での人間関係はかなり真逆ですね。

 

といろさん:社外の打ち合わせは顔を出してオンラインで会議をしていたんですが、社内会議は顔を出さなくてもよかったので、すっぴんにパジャマで働いていました。もともとは出社する会社だったらしいんですけど、コロナ禍でネット系の会社ということもあって完全にリモートワークになったんです。

 

飲み会は、入社した時ぐらいしかなかったですね。人間関係としては、すごく希薄だったんですが、会社としてはホワイト企業でした。研修もしっかりしていて、役職も全部決まっていて。性格判断をして自分が1番合う上司のところに入れてもらえるんです。課長も、すごく柔軟な人で仕事自体はしやすかったですね。

 

知人でベンチャー企業に勤めている子を見るとやっぱり大変そうだなと思うので、楽だなと思う反面、1〜2年目は大きい仕事を任せられることもなく、先輩たちのアシスタント的な役割でした。自分で何かを決定することもなかったので、責任感が少ない代わりに、充実感という面ではあんまりなかったと思います。

 

はるかぜに告ぐ
見た目も性格も真逆なふたりの衣装のコントラストも見どころ!

── とんずさんは結構、密な人間関係を築いていたようですね。

 

とんずさん:会社の人はいまだに連絡くれたり、ライブに来てくれたりもします。社員に肩書きがなくて、全員が対等な立場でした。私は金髪だったんですけど、一応スーツを着て出社したら「めっちゃ社会に溶け込んでる」って思えて嫌で。そこからスーツは会社に置いて派手な服で行ってたんですけど、それでもまったく否定されない。

 

むしろ「たしかにお客さんと会わないなら、派手でダメな理由ってないよな」というふうに徐々にみんなの意識が変わってくれて。仕事内容を変えてくれたときも、「朝、無理やり起きて眠たいまま働くより、家でできることしたらいい」って。本当に柔軟性のある会社だったと思います。

知られざるNSCのルールとは

── とんずさんはもともと芸人を目指していたそうですが、といろさんがNSCに入ったのはコロナ禍ならではの理由があるそうですね。

 

といろさん:私、用事がないと外に出ないタイプなので、リモートワークで運動不足だったんです。NSCにはダイエット目的で入りました。実家で仕事していたんですが、週1くらいでしか外に出ない生活をしていたら、体重はそんなに変わらなくても、脂肪だらけになったというか。運動不足解消にもなるし、人前に出たら顔も引き締まるだろうなと思って入りました。

 

はるかぜに告ぐ
THE W決勝戦の舞台裏。余裕の笑みのといろさんと憔悴しきったとんずさん

── もっと即効性がありそうな…たとえばジムなどには行かなかったんですか。

 

といろさん:ジムもいろんなとこに3〜4回は行ったんですよ。でもやっぱり続かなくて。いつか会社を辞めてフリーランスになりたいという気持ちがあったのですが、フリーランスっておそらく最初は決まった仕事がないと何もすることがないじゃないですか。でもそのときにNSCに通っていたら、学校みたいに週5で授業もあるので、無職という気持ちがしないだろうし、ちょうどいいなと思ったんです。

 

── 芸人を目指していない状態で入ったNSCはいかがでしたか。

 

といろさん:噂ではめっちゃ怖いって聞いてたんですけど、 まったく怖くなかったです。それよりも年下の、10代の子と話すときのジェネレーションギャップの方が印象的でしたね。

 

とんずさん:いやいや、厳しかったですよ。ピアスとかもつけていったらあかんし、飲み物はNSCの中で買ったらあかんとか、いっぱいルールがあるんです。もちろんタバコも吸ったらダメ。難波で吸っているのがバレたら謹慎になる。先生には大きい声で頭を下げて挨拶をするとか、荷物を持ったまま話したらダメとか、立つ時も座る時にも失礼しますと言うとか。

 

── お二人で感じ方がこうも違うとは(笑)。ちなみに、どうして飲み物をNSCで買ってはいけないんでしょう。

 

とんずさん:なんで、って思っちゃダメということだと思うんです。そういう決まりなら外で買ってきたらいいだけ。芸能界にもルールってあると思うんですけど、決められたことができない人はこの世界に向いてないんでしょうね。

 

1年間かけてそれを叩き込まれて感覚に慣れさせる場所だったと思うんですが、夢を追いかけるこの1年間はめっちゃ青春でした。スポーツ学科ってこんな感じかなと。1か月に1本は確実にネタを作って、ライブに出て。振り返ってみても本当にぎっちりお笑いしたなと思いますね。

 

PROFILE はるかぜに告ぐ

2023年デビューの1年目。ほんわかボケ・一色といろとしゃがれたツッコミ・とんずの、見た目も性格も真逆コンビ。同年、女芸人No.1決定戦THE Wで決勝進出。

 

取材・文/内橋明日香 写真提供/はるかぜに告ぐ