モデルの佐田真由美さんは、出産後3年ほど表に出る仕事を休んでいたそうです。社会と遮断されていたという育休中のお話から「子育ては修行」と語るエピソードを伺いました。(全3回中の2回)
育休から仕事を再開するまで
── 出産後、3年ほど仕事を休んでいたと伺いました。
佐田さん:ジュエリーのデザインはさせてもらっていたんですが、撮影で表に出る仕事は休んでいました。娘たちは年子なので、ちょっと歳が離れている双子を育てているような感じで、正直、日々することに追われて仕事をする時間がありませんでした。
── お子さんと向き合った3年間を振り返ってみていかがですか。
佐田さん:赤ちゃん言葉しか話せなくなるんじゃないかな?というくらい、社会と遮断されていたと思います。公園とスーパーに行くのが毎日の一大イベント。年子なので娘たちを双子用のバギーに乗せていました。
当時は毎日大変で、バタバタだったので気がつかなかったのですが、今、娘たちが中学生になってみると、あの頃すごく素敵な時間を過ごしていたなと思うんです。一緒に毎日過ごした日々がいかに幸せだったかと思います。
── 休んでいる間、仕事への未練はありませんでしたか。
佐田さん:ありました、ありました。岩堀せりちゃんもそうですが、子どもを産んで復帰してバリバリ仕事している方が間近にいたことも大きいです。現場に行ったこともあったのですが、そこでやっぱり仕事をしたいなと再確認して。でも実際問題、時間が許されたのが3年後でした。
── 仕事へはどのように復帰したのですか。
佐田さん:私は、穏やかに仕事を再開したと思います。まずは、メイクから撮影終了まで5時間以内に終わる仕事から始めました。産前はドラマや映画など、俳優業をメインでしていたのですが、小さい子を抱えて朝から夜まで家を開けるのが難しいなと。
心配性ですし、人に任せることができない性格だというのも子育てをしてみて気がついたので、できる範囲からモデルのお仕事を再開させてもらいました。
考え方は人それぞれだと思いますが、仕事で輝いている時間があるから帰ってから子どもにも優しくできる、というのもわかります。お仕事はせず、子どもとたっぷり時間を過ごす方もいますよね。子どもとの向き合い方も年齢によって違うと思いますし、子育て期は何を選択しても正解も不正解もなく、全員をリスペクトすべきものだと思います。
仕事復帰後は「撮影がすべての栄養剤」
── 仕事に復帰した頃、どんなお気持ちでしたか。
佐田さん:私は、撮影をしている時の楽しさが、すべての栄養剤でした。それを味わえるから家に帰っても「さぁ家事しよう!」、「子どもたちと遊ぼう!」と思えていました。自分の心を喜ばせてあげないと、人にも優しくできないし余裕も生まれません。仕事でも趣味でも、どんなことでもいいので、自分を喜ばせてあげることが大事だと思います。
── 娘さんは中学生になったそうですね。
佐田さん:もう常に何かにぶつかっています。子育てでなんでもうまくいくことなんてあるんですかね?姉妹で性格が違うので接し方はそれぞれ違うんですが、年頃のふたりなので日々戦っています。女同士だと気になることも多いんです。例えば眉を整えるであっても、はやりは変わっていくので「それはやめて!」と思うんですけど、考えてみたら私もそうだったなと。
── 仕事柄、特に娘さんのメイクやファッションは気になりそうですね。
佐田さん:そうなんです。「おぉ、それは今っぽくない」と思ってしまって、それを尊重したいとは思いつつも「変だよ」とか「似合わないよ」と言ってしまうんです。変わりたいと思う一種の表現ではあるので、頭ごなしに言うのではなく、どうして変わりたいと思ったか、その気持ちに寄り添いながらも反対するというのを本当はしたいんですけどね。難しいです。本当に子育ては修行だと思います。
小さい頃は、命の危険から子どもたちを守りながら生活全般のお世話で必死でした。でもそこから、自我が芽生えて自分の意見が出てきて。「私は私で、ママとは違う」という段階にきたら、なんにでも「はーい」と聞いてくれた時代の娘たちはもういません。常にいい方に導く存在ではありたいなと思いますね。
もし子どもたちが小さい頃に戻れるならば、子どもが発していた言葉をもっと聞いてあげたらよかったなと思うんです。当時は、忙しくて時間がなかったから、いつも何かしながら子どもたちの話を聞いていたなって。
時間を巻き戻せたら、家事をしている手を止めて、横に座って聞いてあげたい。そんな余裕はなかったんですけどね。できることならしてみたいなと思うことがあります。でも「今からでも遅くない!」とは思っていて、今日からゆっくり聞こうと日々思っています。
── 子育てで大切にしていることは何ですか。
佐田さん:感謝の気持ちを伝えて、素直に謝ることができる大人になってほしいです。おかしいなと思ったらその場で解決して持ち越さない。私も言いすぎた時は「ママも言いすぎたね、ごめんね」と素直に認めて謝ります。いつでも謝れる大人でいたいと思うんです。言い訳を重ねて絶対に謝れない大人もいると思うんですが、謝る大人の姿を身近に見ることで、娘たちもそうなってほしいなと思います。
PROFILE 佐田真由美さん
3歳からモデル活動を始め、10代で雑誌「ViVi」でカリスマ的な人気を博し、ファッションリーダーとして同世代の女性から圧倒的な支持を得る。俳優として映画やドラマに出演し、歌手としても活躍。二児を出産後にモデル復帰し、現在はファッション誌を中心に活動。17周年になるジュエリーブランド「Enasoluna(エナソルーナ)」のディレクターとして、デザインやブランドビジュアルなど、ブランドに関する全てを手がける。類稀なセンスと感性で人気ブランドとのコラボレーション企画も多数。
取材・文/内橋明日香 写真提供/佐田真由美