離婚後「世の中の役に立つ仕事に一生を捧げたい」という思いを強くしたという宮崎宣子さん。38歳でハーブ商品を扱う会社を起業するに至った経緯を伺いました。(全4回中の2回)
離婚を機に「世の中のため」に生きたい
── 2014年に以前のパートナーとの結婚生活にピリオドを打たれました。当時のことを伺ってもいいですか?
宮崎さん:結婚には感謝しかありません。当時の私はまだ体調に不安もあったので、心強い支えでした。ただ「体を整えながら家庭を大事にしよう」と退職したのに家庭を築くことができなかった。その現実に直面したとき、これからは「家庭のため」とか「誰かのため」ではなく、「世の中のため」に何か役に立てることで生きていきたいと思ったんです。
当時は離婚を経験して、結婚イコール幸せとは限らないことを実感しました。そしてつくづく私は結婚には向いてないんではないかと思ったのです。だからこそこれからは「世の中の役に立つ、私にしかできない仕事に一生を捧げたい」と強く思いました。
── アナウンサーとは別のお仕事をしようと考えたのですか?
宮崎さん:もちろんアナウンサーは今も大好きな仕事です。なので一生アナウンサーではいたいと思っています。ただアナウンサーには代わりがいくらでもいます。「私にしかできない仕事って何だろう?」と考えているときに思い出したのは、2度目の休職のときに私を救ってくれたハーブでした。
「ハーブティーなんて美意識高い人の飲み物」と思っていた
── ハーブですか?
宮崎さん:自律神経を崩して心療内科で薬を処方してもらっていたとき、めまいや頭痛、吐き気といった副作用に悩まされていたんです。そんなとき、医師から「薬が効きすぎるみたいだから、ハーブティーを飲んでみるのもいいかもね」と勧められたんです。
当時は「ハーブティーで改善されるの?美意識の高い人の飲み物でしょ?」としか思っておらず、ほとんど飲んだことがありませんでしたが、つらい副作用から逃れたい一心でハーブティー専門店に駆け込みました。その後実家に戻って、規則正しい生活をしながら、半年間薬をいっさい飲まずに、調合してもらったハーブティーだけで少しずつ体調が回復していきました。
── ハーブってすごいんですね!
宮崎さん:そうなんです。自分でも衝撃の発見でした。身をもってハーブの薬効に救われたので、「ハーブで何か世の中の役に立てることができるかもしれない」とひらめきました。
まずはハーブに関する知識を得るため勉強に取りかかり、ハーバルコーディネーターやハーバルセラピストの資格を取得しました。「ハーブで世の中の役に立ちたい」と決心した後は、ヨーロッパへハーブ園の取材に行き、地元宮崎でハーブ園を経営しました。その後、工場を紹介してもらって商品開発に着手しました。「ハーブを使ってどんな商品を作れば、たくさんの人の役に立てるかな」と考えれば考えるほど、ものづくりの世界にのめり込んでいきましたね。
そうして、2018年にEMARA(エマラ)株式会社を設立し、起業。「本当にいいものを妥協なくつくりたい」「これは私にしかできない」という熱い想いだけで商品化までこぎ着けました。
「松下幸之助」はじめとするビジネス書から刺激
── 起業やビジネスには、もともと興味はあったのでしょうか?
宮崎さん:アナウンサーとして毎日ニュースに触れるなかで、経済や株価の動き、会社・組織の仕組みに漠然とした興味は持っていました。昔から松下幸之助さんの著書をはじめ、経営心理や組織論に関するビジネス書を読むのが好きでしたね。
本を読んでいるうちに「会社っておもしろいな」と思うようになり、「いつか家族のような組織を作ってみたい」と思うまでになっていました。
── 知識はあっても実際に起業するとなると、かなりのパワーが必要だったのではないでしょうか。
宮崎さん:はい、かなり(笑)。「いい商品でたくさんの人を幸せにして、会社も大きくなれたら素敵だな」という漠然とした想いでスタートしましたが、いざスタートしてみるとあらゆる手続きや不慣れな資料作成に追われ、想像以上に大変でした。もし、起業してから今日までの5年間をもう1度やってみてと言われたら、ちょっと考えるかもしれません(笑)。それくらいパワーを注ぎました。
大変なことはたくさんありますが、ハーブで私にしかできない素晴らしい商品を作って人の役に立ちたいという起業したときの信念があるからこそ、どんなことにも全力で頑張れるし、困難なことにも挑戦できています。
いい商品ができたときやそれを購入してもらえたとき、使ってくださった方から良かったと言ってもらえたときの気分は格別です。
PROFILE 宮崎宣子さん
宮崎県出身。2002年、日本テレビにアナウンサーとして入社し、「ラジかるッ」「ザ・世界行天ニュース」などを担当。愛嬌のあるキャラクターで親しまれる。フリーアナウンサーに転身後は、2018年に自身がプロデュースするオーガニックハーブを扱うボディーケアブランド「EMARA」を立ち上げ、実業家としても活躍。2022年から早稲田大学経営管理研究科に在学中。2021年に再婚し、不妊治療を経て2023年に第1子を出産。
取材・文/笠井ゆかり 画像提供/宮崎宣子