2018年4月に強風で倒れた看板の下敷きになり、脊髄損傷を負った猪狩ともかさん。アイドルとして復帰するも、予想だにしない言葉を投げかけられることもあると言います。(全2回中の2回)

「立てないの?」と言われて

── 2018年4月、強風に煽られた看板の下敷きになり脊髄を損傷。事故後は『車椅子アイドル』と呼ばれることもあるそうですが、ご自身ではどう感じますか?

 

猪狩さん:最初はすごく嫌でした。「女議員」とか「女医」みたいにわざわざ「女」とつける感じに近いというか。車椅子のアイドルも珍しいからそう呼ばれたんでしょうけど、はじめは違和感しかなかったです。私は車椅子に乗ってることを売りにしたいわけではなくて、今まで普通に生活していた人が車椅子に乗っているだけ。よく正統派アイドルとか、異端児アイドルといった言葉があるように、私は車椅子アイドルっていうカテゴリーに勝手に分類されてしまったのかなって思いました。仮面女子の活動を再開してしばらくは、『車椅子アイドル』という文言がついた記事を見つけると、訂正してもらえる場合はお願いして変えてもらっていましたね。

 

── 今はいかがですか?

 

猪狩さん:時間が経過したのか、ここ1年くらいは自然と気にならなくなってきました。もう車椅子アイドルって呼ばれた方が認知してもらいやすいなら、それでもいいやってなってきたんですよね。最近はX(旧Twitter)のプロフィールでも車椅子6年目と書いています。その方がパッとわかりやすいのかなと。

 

── SNSではご自身の体の状態についても発信されています。

 

猪狩さん:困ったこと、不便を感じていることを発信すると、同じような環境の方からわかります!と反響をいただくことが多いですね。またはこういうことに困っているんだと、初めて知ったと仰る方もいます。

 

── ポジティブな意見が多いですか?

 

猪狩さん:う〜ん、私のSNSには直接来ないですが、たとえば私の記事がネットニュースになったとき。コメント欄に「どうして?」と思うような書き込みを見ることはありますね。

 

たとえば少し前にエレベーターに乗っていて、私の足が知らないおばさまに当たってしまったことがあったんです。もちろんわざとではないのですが、「痛い!怪我したらどうするの!」と言われ、謝ることしかできなかったのですが、「ごめんなさいじゃないわよ」とさらに責められてしまい。

 

この話をSNSに書くとネットニュースで掲載されて、「場所を開けてもらうのが当たり前だと思ってる」といったコメントを見つけたんです。そんなことひと言も言ってないのにな、って思うんですが…。 

 

猪狩ともか

また、最近は減りましたが車椅子アイドルと呼ばれることに対して、有名になりたいからわざと事故に遭ったとか、車椅子になったことで有名になったからよかったじゃんと、理解に苦しむ発言を聞くこともあります。

 

他にも私の記事ではないですが、障がい者の人に対して「お前は障がい者なんだからもっと周りに感謝して生きろよ」といった書き込みを目にすることもあります。障がいがあるから何もできないだろう、何を言ってもいいだろうと思われているのかな。

 

── そうしたコメントに対してどうしますか?

 

猪狩さん:スルーする方法もありますが、「アンサーすることでバズりに繋げていこう。こうなったらインプレッションを増やす」くらいの気持ちでいますね。コメントを読んでツラいだけで終わったら悔しいですし。

 

少し前に「(車椅子だから)立てないの?」といったコメントを見つけたので、リハビリでHALという装着型サイボーグを装着して立つ練習をしている姿をアップしたら、たくさんの反応がありました。どういう意図で「立てないの」とコメントしたのかわかりませんが、何を言われても自分でどう変換するか。それに、見てくれる人は見ています。今も定期的にリハビリを続けていますが「体幹強くなったね」とか、「ライブもすごくいいね!」と応援してくださる方もたくさんいますし、自分は自分で前に進もうと思っています。