モデルとして活躍する森貴美子さんは、小学5年生の娘の母親でもあります。「まずは何でもさせてみる」と話す、森さんが子育てで大切にしている自立心の育て方を伺いました。(全3回中の3回)

現場で娘が泣いてしまって

── 娘さんは小学5年生になられたそうですが、産後はどのくらいで仕事に復帰しましたか。

 

森さん:産後2か月くらいで本の出版イベントに出ていました。出産前から書いていたエッセイの発売記念イベントが出産後に予定されていたんです。洋服やジュエリーのデザインの仕事もしていたので、産後も休もうとは考えていなかったですね。産前・産後は主にエッセイやジュエリー、洋服のデザインなどの打ち合わせなどをしていました。

 

森貴美子さん
カフェ巡りも趣味という、リラックスした表情の森さん

── 産後は体型を気にされる方も多いですが、体型戻しに関してはいかがでしたか。

 

森さん:産後は自然と痩せていきました。むしろ食べても食べても太れなくて、痩せてしまう心配がありました。当時は、育児とお仕事の両立で本当に忙しく、記憶も曖昧で(笑)。妊娠前より痩せていたかもしれません。

 

── お子さんが小さい頃、お仕事の際はどなたがみていたのですか。

 

森さん:夫婦で分担して、私が仕事のときは夫が娘を見ていました。小さい頃に一度、現場に連れて行ったことがあったのですが、ひどく泣いてしまって。仕事に集中できなくなりましたし、娘も私もつらくなってしまって。

 

それをきっかけに、仕事には連れて行かないようにしようと決めました。何より赤ちゃんがリラックスできる環境が大事だと思ったんです。少し大きくなってから仕事場に連れて行ったことはありますが、その頃にはスタッフさんと楽しく過ごせるようになっていましたね。

 

森貴美子さん
プライベートでは小学5年生の娘のママの森さん

── 旦那さんとは家事も子育ても分担しているんですか。

 

森さん:夫が元々、家事が得意で。うちはできる人がするというふうに分担しています。私は夫に対して何もいうことはないのですが、夫からの指摘はありますね(笑)。「働き過ぎじゃないの?」と言われることもありますが、本当に休んでいないな...と。その結果、疲れて体調を崩すこともあるので、適度に働かなきゃいけないなと思っています。

森きみ流・自立心を育てる育児

── 森さんからみて娘さんはどんなお子さんですか。

 

森さん:今は小学5年生になったのでお互いの時間がある方がうまくいきますし、もうべったりはしていないですね。でも、小さい頃から自立心が強い子だとは思っていました。

 

周りのお母さん達からは、子どもが親と離れるときに、この世の終わりくらい泣くと言われていたのですが、娘は私と離れる時に幼稚園でも泣いたことがないんです。小学1年生でサマーキャンプに行かせたことがあったのですが、そのときもケロッとしていて。「お母さんのこと、思い出した?」と聞いたら「うーん、たまに」って(笑)。

 

── 働く親の立場からすると頼もしいですね!

 

森さん:そうなんです。先日、私の体調が悪くて夕飯も作れないという日があったのですが、娘は、「わかった、ママの分は私が作るし、自分の分も私が作る」って。「ラーメンも野菜がないとね〜」とか言って「猫の手、猫の手」と言いながら包丁を使って野菜を切っていました。こういうときに張りきっちゃうタイプで、友達同士でいるときもこんな感じのようです。

 

知的なメガネ姿もお似合いの森さん

── お野菜を入れる姿は、普段の森さんのことをよく見ているからですよね。自立したお子さんになったのは、何か理由があると思いますか。

 

森さん:子育てでは、なんでもしてあげないようにと意識していました。娘がしたいことは、失敗してもいいのでまずさせてみる。あとは私がダメな母親のふりをしていました。例えば、駅から家までの帰り道で「歩きたくない」となったとします。

 

「ベビーカーもないし、どうしよう」となったら、「あれっ、お母さんも足が痛くなってきちゃったし、家に帰る道もわからない。どうしよう」って言うんです。そしたら娘は、「私に任せて!道、覚えてるから!こっちだと思う!」と言って張りきって歩き始めます。途中、「ママ、大丈夫?おんぶしようか?」って声もかけられました(笑)。

 

その子の性格にもよるかと思いますが、うちの娘は頼ると、ものすごくやる気を発揮してくれます。私は娘に対して「こんなときどうしよう?」と常に相談しています。母親だからなんでもできるというよりは、一緒に考えることを意識してきました。

 

でもそのおかげで(?)、今となってはダメな母親とちょっと思われている感じはありますけど。以前、通っていた教室の塾長から、「お母さん、いいですね」と言われたことがあります。「何もしないのはいいことです」って。これ、褒められたのかな?わからないですけど(笑)。

 

── 森さん自身もそのように育てられたんでしょうか。

 

森さん:うちの両親も働いていたので、「姉と2人で、なんでもできるよね」という感じはあったと思います。高校生でモデルをしたいと言ったときも反対せずに応援してくれました。自分のことは自分で決めるというのは、娘の子育てにも通じるところがありますね。私自身も、失敗してみないとわからないことはたくさんあると思っています。

 

── 娘さんは将来、何になりたいと話していますか。

 

森さん:小学生らしいのですが、将来なりたいことはそのときそのときで違います。私の誌面や仕事の様子を見てモデルになりたいとか、映画を観て納棺師になりたいとか、はたまたTikTokerになりたいとか。

 

モデルに関しては、どういうところで傷つくかは私がわかっていますし、本音を言うとこんなに難しい仕事はおすすめしないのですが…。でも、もし本人がしたいというなら応援します。親の先入観を押し付けないようにしたいですね。

 

将来に関してはもちろん心配ですが、本人が楽しかったらいいなと思います。子どもが育っていくことは人生の光と言いますか、彼女の幸せがあってこそ私があると思っています。娘の成長は生きる喜びですし、全ての支えになっていますね。

 

PROFILE 森貴美子さん

雑誌『non-no』モデルとして、17歳でモデルデビューし、12年間レギュラー出演。『mina』『LEE』『nina’s』『HugMug』『サンキュ!』『リンネル』など数々のファッション誌に出演。「森きみ」の愛称で親しまれ、アパレルやジュエリーブランドのデザインにも携わり、書籍も6冊執筆、出版している。

 

取材・文/内橋明日香 写真提供/森貴美子