10代から仕事一筋だった畑野ひろ子さんは、妊娠を機に仕事をセーブして出会ったフラワーアレンジメントが「人生のターニングポイントになった」そうです。お話を伺いました。(全4回中の2回)

妊娠を機に「自分と向き合う時間が生まれて」

── 産休・育休はどのくらい取りましたか。

 

畑野さん:長女を妊娠したときは初めての妊娠ということもあって、社長と話して1年近く休みました。でも2人目のときは産後3か月で復帰しました。絶対にこのくらい休まなきゃ!というのを決めていたわけではなかったですね。

 

畑野ひろ子さん
フラワーアレンジメント中の畑野さん「所作も美しすぎる!」

── 仕事をセーブされていた期間はどんなことをしていましたか。

 

畑野さん:自分が出ていた雑誌や、同世代や後輩の活躍を見ていました。仕事に戻りたいからというより、元々ファッションが好きだからそうしていた感じです。初めての妊娠で自分に向き合う時間ができたのは、今振り返っても人生のターニングポイントになる時期だったなと思います。

 

10代からずっと休みなく働いていました。特に結婚する前は、時間も関係なく仕事をするのが当たり前で。結婚して、妊娠して、安定期に入るまでは仕事もセーブするようになってそこで初めてじっとする時間が生まれました。

 

でも元々の性格がせっかちでジッとしていられないタイプなので、「急に生まれたこの時間をどうしよう」って思ったんです。そのときちょうど、夫の友人でフラワーアレンジメントをしている方がいて。「趣味程度にどうですか」と言われた軽いひとことがきっかけで一度やってみようかなって。

 

先生がお家に来てくださって何回かレッスンを続けたのですが、1回受けてみたら楽しくて。今までにない感覚でした。モデルとは違った脳の使い方をしているようにも感じましたし、お花は自然のものなので、今までそういうものに触れる時間もなかったなと改めて思いました。

 

── 現在、フラワーアレンジメントの講師としてレッスンの開催をするなどの活動もしていますね。

 

畑野さん:忙しい時代ですし、無になる時間の大切さや四季の移り変わりを感じる時間があるだけで、気持ちがふっと軽くなってリフレッシュされると思うんです。視覚や嗅覚、五感を使って楽しめるお花の魅力を私も伝えていきたいなと思って、習い事がきっかけに自分で勉強を始めて、ブランドを立ち上げました。

 

畑野ひろ子さん
「組み合わせを考えるのも楽しい!」というイエローを中心にしたフラワーアレンジメントと

── 元々お花が好きだったんですか?

 

畑野さん:それが、まったく(笑)。いただくことはあっても、自分でお花を買ったこともありませんでした。でも私の母はお花がないと生きていけないというくらいお花好きで、実家の庭にはいろんなお花が咲いていました。それが当たり前だったからこそ逆に興味がなかったのかもしれません。

モデルとの意外な共通点

── モデルの仕事と共通することもあるそうで。

 

畑野さん:お花はファッションにも通じるところがあるのが魅力のひとつだと思っています。ファッションも、ちょっとした色味の違いや組み合わせでコーディネートを楽しむと思いますが、フラワーアレンジメントもそれに似ているんです。

 

今まではお花をいただいても、「赤いブーケをもらった」「白いブーケをもらった」というように漠然としか感じられなかったのですが、自分が勉強したことでお花の色味の種類がこんなにもあるということを知りました。これがのめり込んだ大きな理由です。

 

例えば、ピンクひとつとっても赤みがかったもの、青味がかったのもの、アンティークピンクに淡いピンク、ショッピングピンクとさまざまあります。どんなお花を組み合わせるかというのも人によって違ってくるのもお花の楽しさです。

 

私はまだ偉そうには言えないのですが、17歳からモデルの仕事をさせてもらって、かっこいいものから可愛いものまで、本当にさまざまなスタイリングを見させてもらってきました。これまでインプットしてきたものをお花にも反映できないかなと常に考えています。

 

── 逆に難しさを感じることはありますか。

 

畑野さん:お花は生き物なので、「この色味のこのお花が欲しい!」と思って発注しても、自然のものなので、この週には間に合わなかったとか、替わりに来たものが思っていた色味と違うということはありますね。

 

レッスンをさせてもらう時も、みんなで定型のものを作るというより、その方がその日、その時間にしかできないアレンジをしてほしいというのが私のモットーです。参考にはしても、私が作ったものと同じように作らないでくださいと伝えています。

 

モデルの撮影もそうですね。そのとき偶然、雲がかかった時の光の感じがよかったり、ふっと風が吹いたときに髪がかかったことが良かったりとか。お花にも通じるところがあると思います。

 

お花は、インスピレーションと共に生けていくとすごく楽しいんです。どうやって生けていこうかと考える時間は、脳を収縮させる使い方ではなく、リフレッシュさせながら解放していくような、癒しの使い方のような気がして。私も皆さんの仕上がりを見るのが毎回楽しみなんです。

 

── 活動を通してどんなことを伝えていきたいですか。

 

畑野さん:花育という言葉が広まってきてはいますが、小さい頃から自然の色味に触れたり、お花を通して季節を感じたりする機会は少なくなってきているのかなと感じています。自然のものに触れることへの幸せを広められたらいいですし、ファッションとお花が繋がることにも関われたらいいなと思っています。

 

PROFILE 畑野ひろ子さん

ファッション誌『JJ』の専属モデルを経て、テレビドラマ、映画、CMなどに出演。その後ファッション誌『CLASSY』のレギュラーモデルを努め、結婚、出産。二児の母となり、ファッション誌『VERY』、『STORY』にて活動しながら、お花の魅力を伝えるフラワーライフスタイルプロデューサーとして「WILL GARDEN」を設立。レッスンを行うほか、イベントやECサイトでの販売のサポートを手がける。

 

取材・文/内橋明日香 写真提供/畑野ひろ子