トレードマークだった太い眉毛を細くして、ますますテレビ番組で活躍中の井上咲楽さん。山奥であらゆるものを手作りして暮らす実家の母の影響で、子どものころから料理好き。現在もひとり暮らしで自炊生活だそうで…。(全4回中の3回)

 

井上咲楽さん手作りの食事

幼少期の夏休みは食事当番

── ふだんは自炊生活だと伺いました。料理するようになったのはいつごろから?

 

井上さん:4人姉妹ですが料理はみんなします。子どものころは夏休みになるとごはん当番があって、母から「この日は咲楽が作っておいてね」と誰かひとりが任されるんです。それで、家族分のごはんが作れるようになりました。

 

6人分って量も多いので、けっこう大変なんですよ。ふだん母が和食中心な分、私や妹たちはオムライスとか自分が食べたいものを作っていました。

 

実家での井上咲楽さん
最近は休みができるとよく帰るという実家のキッチンにて

── 自分で考える力が身につきますね。お母さんは調味料から手作りするなどかなりの料理上級者。わが家は他の家と少し違うかも…と思うことはありましたか?

 

井上さん:ありました。お弁当のごはんは7分づきや玄米だったから、給食に出た白いお米にびっくり。おかずもきんぴらとか茶色い煮物が中心で、同級生の鮮やかなお弁当に憧れたりもしました。

 

幼稚園のとき、友達のお弁当に入っていた冷凍食品のグラタンがうらやましくて。母に「カップに占いがついているグラタンを買って!」とお願いしたら、母は占いつきのカップを買ってきて、中に手作りのグラタンを入れてくれて。そういうことじゃない〜っていう(笑)。

 

でも、いま実家を離れてみて、あの品数を人数分作っていた母はすごいなと思います。暮らしを楽しむ精神がないと難しいことですよね。私も東京で同じような暮らしをしたいけど、仕事をしながらだとなかなかできません。

 

井上咲楽さんのひとり暮らしの食卓
井上さんのひとり暮らしの食卓

ひとりでもぬか漬け生活

── 18歳から東京でひとり暮らしをされていますね。当時はどんな食生活を?

 

井上さん:上京したときは収録現場で出るお弁当がすごくうれしくて、ワクワクしながら食べていました。でも、いきなり食生活が変わったことで、体型が変わったり、肌あれしたり…。

 

東京は外食できる場所がたくさんあるし、何でも手に入るキラキラした街だなと感動したものの、お金もなくてわりとすぐに自炊の生活になりました。

 

スーパーで好きな材料を調達して、自分でいただきますというところまで完結するプロセスが好きなんですよね。家に帰るのが楽しみで、いまも仕事の休憩時間が長く空くといったん帰宅して、家でごはんを食べたりすることもあります。

 

── 23歳でそれだけ自炊生活できるのはすごいことですね。仕事が忙しくても、自分のために自炊する原動力は何でしょうか?

 

井上さん:予定が詰まっていても、自炊をしたほうが心がラクになる感覚があります。もちろん寝る時間も確保したいですが、ずっとでき合いのものを食べ続けていると、受身で生かされている感じになる自分がイヤで…。

 

「生活」をしていたいんですよね。自分が食べたいものを自分で作ることで、自分で生きている感じがする。自炊によって満たされているんだと思います。

 

お酒を飲める年齢になって外に飲みに行くこともあるので、家での食事は自分の体を整えるためのごはんです。脂質や油を控えめにしたり、野菜を多く食べるようにしたり、あと発酵食品も好きなのでよく摂ります。

 

ひとり暮らしで育てている井上咲楽さんのぬか床
ひとり暮らしで育てている井上さんのぬか床

── ひとり暮らしの自宅でも、発酵食品をたくさん作っているそうですね。

 

井上さん:いまは醤油麹と塩麹、甘酒、豆板醤、ぬか漬けなどを作っています。味噌は母の手作りのものを。最近は、玄米を小豆と塩と一緒に炊いて、3日ぐらい炊飯器で保温して発酵熟成させた「寝かせ玄米」というごはんにハマっています。

 

ぬか漬けは冷蔵庫に入れているので、そこまで大変でもないですよ。寝かせ玄米も炊飯器に入れておいて朝晩混ぜるだけなので、生き物の世話に近いというか…。塩麹がぷっくり膨らんだりするのを毎日見ていると、今日はどうかなっているかな?と、お世話をしている感覚になります。そういうのも、発酵食品の楽しさなんですよね。

 

料理している感覚とはまた違って、自分が一から育てたものが食べられるのが面白いなって。子どものころに、家庭菜園した野菜を食べて感動した記憶があって、その感覚とつながっているのかもしれません。

 

── 井上さんが自然なかたちでしっかりと食育されてきたのがよくわかります。ひとり暮らしを始めて、感じることとは?

 

井上さん:スーパーのお肉ってこういうふうに値段変わるんだなとか、この値段なら安いとか高いとか、そういうことが何もわかっていなかったので、買い物も日々勉強です。父や母はそれをふまえて、毎日献立を考えて、心に余裕を持って楽しんでしていることがすごいと思いました。

 

帰宅して、さぁお腹がすいたな、何食べよう?と思うとき、いつもだいたい食べたくなる味って結局はごはんとお味噌汁なんですよね。だしの味がして、ほっとできるような滋味深い味。そういう家庭の味が好きなんだなとあらためて思います。大人になったいま、味覚を育ててくれた両親にも感謝しています。

 

PROFILE 井上咲楽さん

1999年、栃木県生まれ。2015年、第40回ホリプロタレントスカウトキャラバン特別賞でデビュー。現在は多数のバラエティ番組に出演し、テレビ朝日系の長寿番組「新婚さんいらっしゃい!」では8代目アシスタントを務める。

 

取材・文/大野麻里 写真提供/井上咲楽