1999年に16歳でデビューして以来、ミリオンヒットを多数記録する歌手の倉木麻衣さん。歌手を目指すきっかけから、音楽活動と両立させてきた学生生活の思い出を伺いました。(全2回中の1回)
人を感動させる歌手になりたい
── 小さいころはどんなお子さんでしたか。音楽にはいつごろから触れていたのでしょうか。
倉木さん:外に出て木登りをしたり公園で虫を採ったりするようなアウトドアが好きな子どもで、おてんばなほうだったと思います。家族が音楽好きだったこともあり、幼いころからいつも音楽に触れていました。
4歳のころから母の勧めでピアノを習っていましたが、歌うことも大好きで、小学生のときには合唱部で歌ったりカラオケにもよく行ったりしていました。
── 歌手を目指したのは何がきっかけだったのですか。
倉木さん:中学生のころ、家でマイケルジャクソンのDVDを観たときに衝撃を受けて、「こんなふうに音楽で人を感動させる歌手になりたい」と思ったのがきっかけで本格的に歌手を目指そうと思いました。
ホイットニーヒューストンやマライアキャリーなどもよく聴いていましたが、やはり特に影響を受けたのはマイケルジャクソンです。私が本格的に歌手を目指すきっかけになったアーティストでもあり、今でもリスペクトしています。
── 歌手の夢を叶えるため、デモテープを自宅で作成していたと伺いました。
倉木さん:当時はまだ中学生だったので、カセットで音楽を流しながら歌って、それを別のデッキで録音するという、とてもアナログな方法でやっていました。今思えばかなり聞きにくいデモテープだったんじゃないかなと思います。カセットデッキやテープがわからない世代の方もいらっしゃるかもしれませんね。
16歳でデビューも「あまり実感なく」
── デモテープを聞いた関係者の目に止まり、見事、歌手になる夢を叶えられました。16歳で全米デビュー後に日本でもデビューされましたが、初のレコーディングはアメリカで行ったそうですね。
倉木さん:高校生の夏に急に海外でレコーディングすると聞いたときには本当に驚きました。期待と同時に不安もありました。実際にボストンに行って本場のミュージシャンの皆さんと一緒にレコーディングを行うので緊張していましたが、音楽はフィーリングや楽しむことが大事なんだとあらためて学ぶことができました。
── デビュー後は、圧倒的な歌唱力とベールに包まれた素顔で世間を驚かせました。生活にはどのような変化がありましたか。
倉木さん:当時はテレビなどのメディアにあまり出ていなかったので、デビューしても実感がなかったです。ラジオで自分の曲が流れているのを聞いたり、CDショップでCDが並んでいたりするのを見てデビューしたことを実感するような日々でした。振り返ってみると、音楽と学生生活の両立は大変だったと思います。スタジオで学校の宿題やテスト勉強をしたりしながらレコーディングしたりと、無我夢中でした。
── 学生生活で特に思い出に残っていることはなんですか。
倉木さん:音楽活動の都合もあって部活には入っていませんでしたが、2003年に京都学生祭典という地元の企業・大学・行政、そして地域との連携を深めるお祭りが発足し、私も実行委員のひとりとして平安神宮でコンサートを行ったのはとても思い出深いです。卒業後も京都学生祭典を審査員として訪れたり、学生の皆さんと一緒に歌唱したりと、今でも大事な場所になっています。
── 母校の立命館大学で、客員教授として特別講義をされたそうですね。どのような授業を行うのですか。
倉木さん:毎回そのときに合ったテーマで講義をするのですが、前回は「ライブとソーシャル活動」についてお話しさせていただきました。最初にライブと社会との繋がりをお話しさせていただき、後半は学生の皆さんにグループに分かれて、実際にどんなことができるのか考えてもらい、グループごとに発表をしていただきました。学生とは思えない素晴らしいアイデアや企画の発表の場となり、私自身も大変刺激を受けました。
── 現在、学生さんたちは夏休み期間ですが、倉木さんご自身は学生時代どのように過ごされていましたか。
倉木さん:私が学生のころは、学業と音楽活動を両立するために、夏休みを利用して全国ツアーを行っていました。長期休みにはライブをすることが多かったと思います。皆さんそれぞれ今しかできないことを経験して、貴重な学生時代の思い出をたくさんつくっていただけたらと思います。夢を叶えるための行動をするにもいい期間だと思いますし、今はさまざまな方法で自己PRができる時代なので、自分の個性を大事に夢に向かって頑張っていただきたいですね。
PROFILE 倉木麻衣さん
1999年「Love, Day After Tomorrow」で日本デビュー。ミリオンヒットを立て続けに記録し、1stアルバム「delicious way」では400万枚を突破。名探偵コナンとの長年にわたる強いタッグにより、2017年にはコラボ21作品で 「同じアーティストにより歌われたアニメシリーズのテーマソング最多数」としてギネスワールドレコーズ™に正式認定。近年では「渡月橋 〜君 想ふ〜」が大ヒットを記録。今冬、デビュー25周年イヤーへ向かうヒット曲満載のシンフォニックコンサートを全国4箇所で開催。
取材・文/内橋明日香 写真提供/倉木麻衣