映画「リメンバー・ミー」の主人公役で有名になった石橋陽彩さん。まもなく公開のミュージカルは変声期後、初の舞台となるそうで──。現在18歳の石橋さんに話を伺いました。(全2回中の2回)
高3は「青春が詰まった1年間」
── 今春、高校を卒業されてからはお仕事に専念されているそうですね。これまで学業との両立は大変でしたか。
石橋さん:中学、高校と学校に通いながらお仕事をしてきましたけど、テスト前などは、学校行って、仕事に行って、家に帰ってきてから一夜漬けをしていました。夜中にコーヒーやエナジードリンクを飲んで血眼になりながら。でも、この仕事をしていたからというより、もともと計画的にコツコツするタイプではなかったので、いずれにせよこのやり方でやっていたと思いますね。
仕事と向き合える時間も今より少なかったことが大変でした。でもその分、毎日が充実していて楽しかったです。仕事も勉強も頑張りたいとは思っていたので、授業だけは真面目に受けないと!とは思っていました。テストで点が取れなくても授業だけは頑張ろう!って(笑)。
── 学校の行事には参加できましたか。
石橋さん:中学の体育祭に参加できないときがありましたが、それ以外はほとんど参加できました。高3の修学旅行は今でも写真を見返すくらい、楽しい思い出です。コロナの影響で高校1〜2年のときはイベントが制限されていたんですが、高3では文化祭も体育祭も、修学旅行もできて。本当に、青春が詰まった1年間だったと思います。
── コロナ禍の学生生活でしたね。
石橋さん:直前でイベントがキャンセルになることもありました。毎日、学校に行ってテストを受けるだけの日々のように感じていました。お昼も黙食で前を見て食べる。「これで高校生活終わったらどうしよう」と思っていたので、最終学年でいろんなイベントが実施されてよかったです。
変声期で活動休止も「ひとつの壁」
── 石橋さんといえば小さい頃から今も、高音域も魅力のひとつですが、ちょうどお仕事を始めた頃は声変わりのタイミングに当たる時期ですよね。
石橋さん:中学の頃に「ちょっと声質が変わったかな、もしかして声変わりなのかな」って思った時期があったんです。でも、そんなに変化はなく、女性のアーティストの方の曲も変わらず歌えていました。
「リメンバー・ミー」が公開されたあと、中2の終わり頃からだんだん声がかすれてきて、安定しなくなりました。そこで歌の活動を休止すると発表して。でも正直、落ち着くまで長かったですね。落ち着いてきたなと思ったのは高3の始め頃でした。
── 変声期の間もレッスンは続けていたんですか。
石橋さん:ボイストレーニングの先生と、変声期が落ち着いた時にどれくらい声を出せるかという調整をずっとしてきました。ボイストレーニングはずっと続けていて。この間にいかに高音を伸ばして、終わった後でどう音域を伸ばせるか。負担をかけない程度に、裏声でずっと歌っていましたね。歌はお休みして、発声だけをする日もありました。
── 当時、どう思っていましたか。
石橋さん:今まで歌が大好きで続けてきたなかで、変声期はひとつの壁でした。一時的に音域が狭まってしまうので歌える曲が限られていましたし、キーを下げなきゃならないことも頻繁に起きていました。高音域で使う、ミックスボイスという裏声と地声の間が出なかったんです。地声で出そうとすると裏返ってしまったり、かすれてしまったり。大変でした。
みんなから「待っているよ」と言われても、変声期で歌が自分の思うように歌えなくなって、「このままの声の状態だったらどうしよう」と悩みましたし、なんで変声期ってあるんだろうと思ったこともありました。
でもトレーナーの先生に付き添っていただいて毎日レッスンしていたおかげで、音域が広がったんです。まだまだ研究中ではありますけど、変声期が終わって以前よりスムーズに声が出せるようになったなと思います。
── 今ではすっかり大人の魅力の声が出ていらっしゃいますけど、変声期後の声を聞いた方からどんな反応をされますか。
石橋さん:昔の僕を知っている方は、「声が低くなってる!大人になってる!」と言われます(笑)。
── 「リメンバー・ミー」のときの印象が強いんでしょうね。
石橋さん:18歳になった、今の僕のことをもっと知ってもらえたらと思います。
── ご自身のことをどんな性格だと思いますか。
石橋さん:学生時代は、「賢そう」とか「しっかりしてそう」とありがたくも言われていたんです。でも自分ではそうじゃないなって。部屋も散らかりますし、物もどこに置いたかわからなくなります。どっちかといえば、おっとりというかマイペースですね。中学生の妹に、僕ってどんな性格かなと聞いたら「面倒くさがり屋とか、三日坊主かな」って言われて、「そんなかな!?」って思いましたけど(笑)。
── 歌は3日どころか14年も続けていらっしゃいますね。
石橋さん:好きなことだけは続けられるんですけど、それ以外は…。本当は、筋トレも頑張りたいんですが、なかなか続かないんです。体の線が細いので、筋肉をつけたいと思っているんですけど、筋トレが続いたのは、長くて9日でした。
── ちょっと惜しいですね!キリよくあと1日!
石橋さん:ほんとですよね。続けたいんですが、それがなかなかできないんですよね。
── お休みの日は何をされていますか。
石橋さん:最近は休みの日にアニメのいっき見をすることが楽しいです。前々から観る作品を決めておくこともありますし、当日にどれにしようかなと探すのも楽しいです。いっきに見ることでその世界に浸れるといいますか、非現実感を味わうのが好きで。
しばらくその世界観を引きずるのでキャラクターになりきってみたりします。自分も登場人物になれる感覚が楽しいですね。
── いっき見なので、休憩もなしでしょうか。
石橋さん:はい、なので半日は使いますね。学園もの、ミステリー、バトルものなどジャンル問わず観ます。サウナと同じような感じで観終わったあとはリラックスできて、整います。
── これから挑戦したいことについて教えてください。
石橋さん:変わらずいろいろなことにチャレンジしていきたいです。今は間近に公開が迫ったミュージカル「カラフル」を死に物狂いで頑張ろうと思っています。今まだ稽古中で、役を模索しているところなんです。
鈴木福くん演じる主人公「ぼく」の友達の「早乙女くん」役なのですが、早乙女くんの気持ちに近づけるように毎日頑張っています。福とは同級生でもあり、プライベートでも仲良しなので、一緒にミュージカルに出演できて嬉しいです。
── ミュージカルの難しさと魅力はそれぞれなんでしょう。
石橋さん:声優として声でお芝居することはあったのですが、ミュージカルでは体や動きをつけながら役のことを考えなきゃならないのが難しいですね。台本にはないことも考えるので想像力が試されるなと思っています。
演出家の方からアドバイスいただいて、次の日に新しい感情で挑戦してみたら「良くなったね」と言ってもらえて。こういう挑戦ができるのは楽しいなって。新しい気持ちを見つけられるのが楽しみでもあり、やりがいを感じることでもあります。
変声期が落ち着いてから初めてのミュージカルで、自分の声が一転してから初めての作品になります。ぜひ多くのみなさんに観ていただきたいですね。
PROFILE 石橋陽彩さん
2004年千葉県生まれ。4歳から歌とダンスを始め、2018年ディズニー/ピクサー映画「リメンバー・ミー」の主人公"ミゲル"の日本語吹替版声優を担当し、一躍有名に。舞台、声優、CM、歌番組等で幅広く活動。今月22日から公開のミュージカル「カラフル」に出演。
取材・文/内橋明日香 写真提供/石橋陽彩