昨年、旅行会社「令和トラベル」に転職した元テレビ朝日アナウンサーの大木優紀さん。華やかなテレビの世界から、スタートアップ企業への異例な転職が話題になりました。
小学生2人の母としても忙しく過ごす大木さんに、家庭と両立するためのやりくり術や夏休みの計画を聞きました。
朝7時には会社に。ひとり時間で集中力アップ
── 仕事のある日は、一日をどう過ごされていますか?
大木さん:昨年から子ども2人が小学生になり、各自で学校の往復ができる状況になったことで私にとっても大きな区切りになりました。
子どもたちが学校に行くのと同時に私も家を出て、7時には会社にいます。オフィスでコーヒーを入れるところから一日がスタートして、9時ごろまではひとりで過ごします。
静かで仕事がはかどるので、この時間で一気に原稿のチェックやSNSの文言チェックなどの確認作業を。あとは社外の方とのメールのやりとりなどをして、9時から社内のミーティングに入ることが多いです。
4月から執行役員に就任して、全体をつなぐミーティングの回数がどうしても増えたので、朝の時間を活用するようになりました。
── 帰宅時間は何時ごろですか?
大木さん:子どもたちのランドセルに安全用のGPSをつけているので、学校から帰るタイミングが確認できます。「あ、帰ってくるな」と思ったら、だいたい16時ごろには会社を出て、その時間に帰宅できたら理想的ですね。
朝早くから働いているので、勤務時間的には問題ありません。夕飯の時間には家にいて、子どもたちとちゃんと会話できるようにしたいなと思っています。
── アナウンサー時代とは、時間の使い方が大きく変わっていますね。業務はきっちり夕方に終わるのでしょうか?
大木さん:17~18時だと、まだ仕事が動いている状態なので連絡はどうしても来てしまいます。私もつい仕事したくなって、夕飯前や、子どもたちが寝たあとに仕事をしていたのですが…。一日中仕事のスイッチが切れない状態が続いて、一時期、自律神経の乱れか体調を崩してしまって。
ストレスの自覚はなかったのですが、自分でコントロールしていかないとこれまでと生活リズムがまったく違うんだということに気がつきました。
というのもアナウンサー時代は、オンエア中にMAXでスイッチを入れる仕事。いまはMAXほどでなくても、ある程度のレベルでずっとスイッチを入れ続けなければいけない。自分でオフにしないとスイッチが切れないんですよね。
最近は仕事したい気持ちを抑えて、自分で仕事モードのスイッチを切るタイミングを意識するようになりました。スマホとPCを閉じて、子どもが寝た後はわざとドラマを観たりして、少し違うことを考えるようにしています。
“名もなき家事”を夫がしてくれるように
── 大木さんが執行役員に就任してから、夫婦の家事分担に変化は生まれましたか?
大木さん:すごく変わりました(笑)!以前は子どもが登校した後、私が午前中はリモートワークをしながらだったので、その間に家事をしていたんです。いまは子どもが学校へ行っている時間はフルで出勤しているので、家事に割ける時間が短くなったんですね。
朝、私が家を出る前に洗濯機を回すと、夫がその後に干しておいてくれるようになりました。子どもたちが小学生になったことで、一緒にスポーツを楽しんだりとか、夫がより父親らしくなっているような感覚はあります。
── ほかに、家事分担で変わったと感じる瞬間は?
大木さん: “名もなき家事”ってあるじゃないですか。ちょっとした事務作業とか連絡とか、切れたストックを買うとか。そういうことに夫が気づいてくれるようになったのが、すごくすごく小さいけど、大きな変化です。
この前は、食洗機の部品を付け替えてくれていました。お箸を入れるところが壊れていて、気にはなっていたのですが時間がなくて。いつの間にか新しい部品が付いていて、以前ならこういうことはしてくれなかったよな〜って(笑)。
きっと、私に言うよりも自分で買ったほうが早いと思ったんでしょうね。品番を調べてネットで注文したようで、夫の変化を感じました。そういうことはいつも私に任されていたから。それくらい気になってしょうがなかったのかも(笑)。
夏はデジタルデトックスの旅へ
── 昨年の夏休みは会社の休暇制度を利用して、お子さんとニューヨークへ行かれていましたね。
大木さん:はい。1か月滞在して、とてもいい時間になりました。私の8月の業務時間を4分の1まで減らして、平日は毎日2時間だけニューヨークからリモートで仕事をする、という滞在スタイルでした。
一番よかったのは、やっぱり子どもたちとのコミュニケーションですね。現地に知り合いがいるわけではないので常に3人でいて、この子たちがいまどういう段階で、そもそもどういう子なのか…みたいな、これまで見えていなかった部分がよく見えました。
現地のサマースクールに入れたので、子どもたちにとっても挑戦で。新しい環境で過ごすという体験をして、いろんな絆が深まりました。
── 働きながら休暇をとるのは、前職ではなかなかできなかった体験かもしれませんね。働き方を変えて、母親として感じることはありますか?
大木さん:アナウンサーとしてテレビの画面に出ていたときは、子どもたちにとって母親が働いている姿がわかりやすい形で見えていたと思います。もしかしたらいまは、彼らにとってちょっと見えにくくなっているかもしれない。
だからなるべく、いまの仕事ではこういうことをしているよ、ということを子どもたちに伝えるようにしています。長女は年齢的にも理解できるようになってきたので、働くことの楽しさとか意味とか、そういうことは意識して伝えています。
いまはいろんな生き方があって、娘が何を選択してもいいと思っています。私は女性が働くことの楽しさをすごく感じているので、同じ女性として彼女には働く姿を見てほしいですね。
── 夏休みが始まりますね。今年はどんな計画がありますか?
大木さん:今年の夏休みは1か月の業務時間を2分の1にして、前半は通常勤務、後半は家族4人で13日間のクルーズ船に乗る予定です。
船の上はWi-Fiに制限があるので、デジタルデトックスをしたいと思っています。いまはどこにいてもインターネットにつながって、いつでも連絡が取れる時代。スマホやPCから大人も子どもたちも離れられるチャンスかなぁ、と。
こういう体験も旅行のひとつの魅力ですよね。毎年、夏休みには、なにか新しいことにチャレンジできるといいなと思っています。
── お仕事も含めて、今後の目標はありますか?
大木さん:大好きだった海外旅行を私自身も再びするようになり、改めて、旅はいいですね。そのワクワクをもっと伝えるサービスを提供していきたいです。
業務でSNSを担当しているからこそ感じるのが、スマホの画面には、SNSを通して世界各地の感動的な動画がどんどん流れてきます。そうすると、この小さい画面の中の15秒で世界を知ったような感覚になってしまう方もいるのではないでしょうか。
だけど私は、みんなにスマホから顔を上げてほしいなと思っています。画面に流れてくる自由の女神と、現地に行ったときに見る自由の女神。もしかしたら画面のほうが綺麗かもしれないけど、現地でフェリーに乗って風を感じながら見る自由の女神は、やっぱり違うから。そういう体験を、とくに自分よりも若い世代の方々にしてほしいですね。
PROFILE 大木優紀さん
1980年東京都生まれ。2003年テレビ朝日アナウンス部に入社。『くりぃむナントカ』『ET SPORTS』『スーパーJチャンネル』などバラエティ番組から報道まで幅広く活躍する人気アナウンサーに。2021年12月に同社を退職し、2022年1月株式会社令和トラベルに入社した。2010年に一般男性と結婚し、現在は小学生の長女・長男と4人暮らし。
取材・文/大野麻里