「ヒロシです」のネタでブレイクを遂げた後、紆余曲折を経て、ソロキャンプで再ブレイクした芸人のヒロシさん。波瀾万丈な今までを振り返って、思うこととは。(全4回中の1回)

 

お笑いタレント・ヒロシさん

正直、行き当たりばったりの人生だけど

──「自分らしさ」を追求することで、自由な生き方を体現されてきた印象があります。

 

ヒロシさん:そう言っていただけるのはありがたいのですが、別に、何か考えや戦略があってやってきたわけでもなく、正直、行き当たりばったりの人生です。その時々の気持ちに従いながら、やりたいことをやって軌道修正して。その都度、目標も少しずつ変わっています。

 

── そうなのですね。でも「ヒロシさんの生き方に憧れる」という声もよく聞きます。

 

ヒロシさん:はたからみると、何のしがらみもなく、単にやりたいことをやって自由に生きているように見えるのでしょうね。たしかに、自由でいたいという気持ちは昔からすごく強くて、そのために試行錯誤はしてきました。なかなか理想どおりとはいかないけれど、だいぶやりたいことができる環境が整ってきたなと思っています。

 

ただ、自由でいるには、不自由さも引き受けなくてはいけない。それは、これまでの人生経験のなかで学んできたことでもありますね。

 

──「不自由さを引き受ける」というのは?

 

ヒロシさん:自分のなかで「ここまでは許容する」という線引きをして、心と折り合いをつけながらやるということです。


本来、僕は、すべて自分の思うとおりにやりたいタイプ。ワガママだという自覚はあります。例えば、メディアに出るときだって、本当は自分の言ったことをそのまま伝えてもらいたいし、「こうしてください」と言われても、納得できないことはやりたくない。

 

でも、時として、かなり脚色されたり、自分の意図と異なるものができ上がってくる場合もあるじゃないですか。ただ、それに対して文句があるなら、「じゃあ、自分で全部作れば?」という話になる。お金を出す人がいてすべて成り立っているのだから、そこは大人として受け入れなくてはいけない部分もあります。

 

海辺でソロキャンプをしたときの1枚

── たしかにそうですね。

 

ヒロシさん:だから、自分のなかで「許容範囲」を明確に決めて、そこを飛び超えそうなものは、最初からやらない。そうすることで、ストレスで疲弊することがなくなりますし、自分で決めた許容範囲なら、多少のことは我慢できて、頑張れます。

 

── 自分のスタンスを明確にしておくことは、大事ですよね。

 

ヒロシさん:「何でもかんでもは受け入れないよ」っていうことですね。でも、今は若いころと違って、いろんな大人の事情もわかるから、その都度、許容範囲を広げたりして対処するようになりました。

「最悪の想定」が何かを生み出すきっかけに

── ネガティブなイメージが強いヒロシさんですが、お話を伺っていると、すごくエネルギッシュですよね?

 

ヒロシさん:どうなんですかね…。僕の物事の考え方としては、常に最悪のケースを想定して、それがもたらす影響を考えます。「もしもこっちを選んだら、最悪の場合こうなるだろうな…。でも、一人だったら生きていくくらいはなんとかなるか」という感じです。
どちらがいいかというよりも、どちらがより“嫌”か。そう考えると、やっぱり超ネガティブなんじゃないかなあ。

 

── でも、その発想よくわかる気がします。最悪を想定することで、逆に開き直って前に進める、みたいな…。

 

ヒロシさん:そうなんですよ。それに、最悪のケースを想定しているときの妄想って、意外と何かを生みだすきっかけになったりしますよね。自虐ネタもそうだし、「じゃあ、次はこんなことしてみたらどうだろう」と発想が広がっていく。昔からそういう妄想にひたることが、すごく好きでしたね。

 

ただ、やりたいことはいろいろ考えるけれど、もう50代なので、体力がついていかない部分もあります。自転車にまたがった瞬間、息が上がっちゃうので。

若いころにできなかったこと全部やってやる

── ソロキャンだけでなく、バンドを組んだり、車やバイクをいじったりと、すごく多趣味でアクティブですよね。

 

ヒロシさん:最近、そこにラジコンの趣味も加わりました。子ども時代や若いときに、お金がなくてできなかったことがたくさんあるので、それを全部やりきってから死んでやる!と思っていて。バンドは、高校生の頃にX JAPANとかZIGGYのコピーバンドをやっていたので、また復活したいなと思って始めました。

 

昔はお金がなくて買えなかったラジコン。今になってハマっているそう

── バンドブーム、懐かしいです。いろんな活動が急ピッチで進んでますね。

 

ヒロシさん:40代後半から、残りの人生をどうやって生きていこうかと考え始めるようになりました。今、51歳だから、元気に体が動くのって、あと20年くらい。それって、あっという間じゃないですか。だから、やりたいことはどんどん始めないと間に合わない
今は、「青春の取り返し作業」に入っているところです。残り時間がカウントされているから、ちょっと無理して、いろんなことに手をつけてすぎている感がありますね。

 

なので、「いろんなことをマイペースでやっている感じがうらやましい」といわれるのは、ちょっと違うかもしれない。

 

── でも、人生を謳歌されていて楽しそうです。

 

ヒロシさん:いろいろと苦労が多い人生だけど、「あれをやっとけばよかった」と後悔していることは、ほとんどないんです。やりたいことは、だいたい全部やってきたので。
一番大きいのは、芸人になったこと。全く売れない場合、借金を抱えてホームレスになるところまで想定して。でも、「それでもいいや。やらないと死ぬ間際に後悔するだろうな」と思って上京しました。

 

一応、少しだけですが、会社員も経験しているので、そのままサラリーマンとして安定した給料をもらって生きる道もあったけれど、それだときっと、自分はテレビを見ながら「こんなの全然おもしろくないじゃん」と、文句を言う人生になりそうだったから。

 

──「最悪のケースを想定して天秤にかける」を実践されたわけですね。

 

ヒロシさん:ただ、どっちの人生がよかったのかなと考えると、難しいですよね。もし、あのまま会社員として安定した暮らしをおくっていたら、ひょっとして出世したりして、社内の美女と結婚していたかもしれない。でも、きれいすぎるから男が寄ってきて、最終的には浮気されちゃって、離婚騒動で地獄をみていたかも…。

 

── そこにも幸せな未来はないんですね…。

 

ヒロシさん:でも、結局選ばなかった人生のことなんて分からないから、比べようがないんですよね。

 

そうなると、自分の歩んできた道を正解だと思い込むしかない。「これでいいんだ」って自分に言い聞かせて洗脳しておくほうが楽だし、幸せですよね。

 

PROFILE ヒロシさん

1972年生まれ。熊本県出身。2004年頃「ヒロシです」のネタでブレイク。2015年「ヒロシちゃんねる」を開設し、YouTuberとしての活動も開始。BS-TBS『ヒロシのぼっちキャンプSeason7』(毎週水曜よる10:00)、熊本朝日放送『ヒロシのひとりキャンプのすすめ』(毎週金曜よる0:15)などのレギュラーがある。6月30日には自身のアウトドアブランド『NO.164』より『 NO.164 野外洋袴』(やがいようばかま)〜ヒロシ特別モデル〜を発売!

 

取材・文/西尾英子 写真提供/ヒロシ